「森敬斗が一軍にあがってくるみたいね」
結乃が淡々と言う。
「おー、怪我はもう大丈夫かな」
理衣が少し驚いた様に言う。
期待のドラ1も既に5年目で、大卒ルーキーと同い年。
ここで結果を出せなければもう後がない崖っぷち。
「かわりに石上が2軍の教育リーグだって」
「結果を出しているのに2軍にいっちゃうの?」
「うーん、まあ理由はあると思うけれど」
「どのような?」
「なんだかんだ言っても森はドラ1でなおかつ地元選手だから、チャンスを与えたいのはあるでしょうね」
「まあ、そうだよね」
とはいえ、チャンスもここまでくると凄く沢山貰えるということはないだろう。
ショートを守れる内野手を獲得しまくっているのがその証拠。
「ここで結果を出せないと、本当に外野コンバートも視野に入れた方がいいと思うけれど」
「足と肩は本物だし、高校の時センターとかも経験あるんだっけ?」
「ショートでやるなら、今の林、石上より上にいかないといけないからね」
「そうだよねぇ」
「そして石上を2軍にいかせるのは、ショートの守備をやらせるためじゃないかしら?」
「守備面はまだ課題ありといわれているもんね」
現状、一軍ではショート候補がひしめいていて、なかなかショートを守れる機会がない。
ならば二軍で、という考えはあるのではないか。
「石上だけじゃなく、林、京田、柴田、西巻、さらに大和もいるわけで」
「出場機会も限られてしまう、と」
「その点、2軍の方が少ないでしょ」
「ショートで沢山出場して、守備機会を増やし、守備力をアップしたいところだね」
いずれにしても森としては背水の身。
果たしてどのような姿を見せてくれるのか、楽しみでありますが、怖くもありますね。