■2018年ベイスターズの戦力を考える 新戦力(ルーキー編 1)
2015年 山崎 康晃、石田 健大、倉本 寿彦
2016年 今永 昇太、戸柱 恭孝
2017年 濵口 遥大、細川 成也
「DeNAになってからのドラフト戦略は今のところ成功しているといって過言ではないわね、むふふ」
何やら選手名鑑を見ながらご満悦の様子である結乃。そんな結乃の姿を見て、理衣は悦んで良いやら、不審に思うべきなのか悩む。可愛い従妹であるのだが、のめり込むとかなりハマって周囲がよく見えなくなることもしばしば。
まあ、だからといって理衣には声をかけないという選択肢はないのだが。
「何を見ているの、結乃」
「よくぞ聞いてくれました、理衣ちゃん。今年のルーキーを考えるにあたって、まずは近年のドラフト獲得選手のことを振り返っていたのよ!」
ずびし、という感じで指を突き出してくる結乃に、理衣は目を丸くする。
「ここ三年連続、ドラフト1位が大当たりなのよ。凄いと思わない」
「確かに、私でも名前知っている選手だ。でも、ドラフト1位ってことはプロに入る前から活躍していて期待されている選手なんでしょう。活躍してくれて当然なんじゃないの?」
野球の道に引きずり込まれかけているとはいえ、まだまだ知識の浅い理衣は何がそんなに凄いのだろうと素朴な疑問を覚える。
「活躍して、当然、ですって……何てこと言ってんのよ理衣ちゃんは」
「え、違うの?」
「当たり前でしょう、ドラフト上位だからって活躍するなんて決まってないわよ。まあ、高卒とか、素材型の選手はそもそもすぐに出てはこないだろうけれど、大卒や社会人出身で即戦力と期待されている選手でも、そう活躍できないのがプロの世界よ」
「そうかぁ、まあプロだもんね、そりゃそうか」
考えてみれば当たり前のことである。華やかなプロ野球の世界だが、実際にスポットライトを浴びることが出来る選手は僅か一握り。しかもそれさえも、いつまで輝いていられるかは分からないのだ。
「最初だけ活躍するんじゃなくて、長い間活躍してほしいよね」
「そうだね、球界の宝は選手そのものなんだね」
しみじみと納得して頷く理衣であったが。
「……でもそれはそれとして、やっぱり即戦力ルーキーがどれだけ活躍するかは期待しちゃうわよね! シーズンを戦う上で計算には入れないけれど、そこにプラスアルファで乗っかってくれるとそれだけで大きいもんね」
あっさりとしんみり感が吹っ飛ばされるが、ファンとはそういうものだろう。
「今年のルーキーも期待大よ。まずはなんといってもドラ1の東MAX! これで四年連続で大卒ナンバーワン左腕を指名して左腕カルテットの完成! 他の三人ともまた違い、小さいけれど制球力で勝負する、今年の新人王候補大本命とも噂されているんだから。ローテーションに入ってくれないと困るレベルよね、もう」
「なんかインタビューとか見たけれど、不思議くんだったよね」
「不思議キャラには慣れているから大丈夫!」
何が大丈夫かは置いておこう。
「んで、ドラ2の神里くん。正直、ドラフト指名のときは誰それって思ったし、外野手が上位でいるかと思ったけれど、オープン戦見ていると、思った以上に良いじゃない。足が速くて守備が良い、打撃も今のところ想像以上。これ、外野手争いに入ってくるわよ本当に」
「あとイケメンだよね。彫りが深い!」
「この二人でもう、当たりの予感がひしひしとするわ」
嬉々として語る結乃を見ていると、理衣も幸せな気持ちになってくる。捕らぬ狸の皮算用とは言うが、今までの実績、そしてキャンプからオープン戦での結果を見ていれば期待したくなるのも無理ないだろう。
特に東は、濱口が肩の違和感で開幕が危ぶまれているだけに、むしろ戦力として計算しないとマズイくらいであるが、やってくれそうな雰囲気はある。
「うーん、そう考えると、やっぱなんだかんだいってドラフト1位、2位とかの上位選手は当たりやすいんじゃないの」
気持ちが軽くなってそう口にすると。
「だーかーらー、甘い、甘すぎるのよ理衣ちゃんは!! そんなん言ったら、那須野と染田を獲得できた年から黄金時代が出来たはずじゃないのっ。でも、じ、じ、事実は……う、うぅぅっっ!」
むせび泣く結乃。
そんな結乃を見て理衣は思った。
女子高校生がなんでそんなことを知っているんだ、と……