「3・連・発~~!!」
ガッデム、という感じで頭を抱えてカーペットの上に突っ伏す結乃を理衣は見つめる。
まあ、分からなくもない。
初回、順調に2死までとったというのに、クリーンアップ相手にまさかの3連発被弾したのだ、なんだそれと言いたくなる。
「クリーンアップ3連発といえばベイスターズのものだったのに、悔しいぃ」
いや、たまたま昨年、奇跡的な3連発でサヨナラがあっただけで、別にベイスターズのものではない。そんなことを言ったらタイガースファンに怒られてしまいそうだ。
「頼むわよ開幕投手……」
今永、ウィーランド、濱口の三人が開幕三連戦に投げないことが確実となった今、石田にかかる期待は大きい。というか、石田に頑張ってもらわざるをえないのだ。
誰が投げるか決まっていないとはいえ、候補は飯塚、井納、バリオス、熊原、このあたりだろう。果たしてヤクルト打線を抑えることが出来るのか不安であるし、開幕三連敗だって十分に考えられるのだ。
ヤクルトの開幕投手はブキャナン、良い投手だ。相性的に、石川もベイスターズ戦に投げるだろうか。ヤクルト投手陣は決して強いわけではないので、先発投手が揃うまでは打線にカバーしてもらいたいが、オープン戦を観る限りでは主戦クラスのバットは湿りがち。チーム成績が悪くないからといって浮かれていられる状態ではない。
「打っては、雄星にあっさり抑え込まれちゃってるし。まあ、ある程度は予測できたことだったけど」
良い投手をそう簡単に打てるわけではないから仕方ないとはいえ、見所なく終わってしまったのは悲しいところ。
「大丈夫なんか、この球団……?」
とうとう、こんな発言まで出てきてしまう始末だが、定期的にこのあたりの精神状態に落ち込むことはある。本当にヤバいときは、こんな発言すらできなくなるものだ。
「一試合だけで判断しないの。ほら、雨天中止で試合間隔もあいていたし、これからオープン戦最後を締めればいいじゃない」
とはいえ放っておくわけにもいかず、優しく肩をさすりつつ声をかける理衣。
「ほら結乃、良いところ探ししようよ」
「良いところ~? どこかあったかしらねぇ」
肩をつかんで揺するも、脱力した結乃の体はぐらぐらと揺れるだけ。
「あったよ、ほら、パットン将軍がこの前の登板からきちんと修正してきて抑えたじゃない」
「あぁ、まあそうね、将軍が駄目だとどうしようもないもんね」
ようやく目に光がともり、自立して姿勢を保つようになる結乃。
「康晃は調子良さそうだけど、他の中継ぎがイマイチな感じだからね。後ろがしっかりしないと絶望だもの」
「国吉と砂田もなんだかんだで抑えたし」
「まあ、国与四だったけどね」
「と、とにかく残り2試合、開幕に向けて楽しみだね!」
強引に前向きに持っていこうとする理衣なのであった。
3月23日の試合結果
○ライオンズ 4-0 ●DeNA