「今日から5日連続、2018年のペナントレースのため各球団の状況を考えてみるわ!」
開幕前となればこの手のことは恒例であるから、いきなりの結乃の発言にも理衣は驚くこともなく対応する。
「最初は、阪神タイガースよ!」
オープン戦ではボロボロの阪神タイガースだが、もちろんオープン戦の成績をうのみに出来るわけもない。
「阪神は読みづらいわよね。金本監督が若手を積極起用して若返りに成功しつつあるけれど、複数年連続して結果を残しているわけじゃないから」
高山、北条、中谷、大山などなど対戦していて可能性を感じるし、実際に打たれて苦しめられもしたが、実績という点ではまだ未知数な部分が多い。爆発すれば面白そうなのではあるが、ドツボにハマる可能性もありそうなのだ。
そんな若手がのびのびと力を発揮できるかは、ベテランにかかっているのかもしれない。力のあるベテランが実績通りの力を出せば、相手投手の気は彼らに向かい、若手に対してはマークが緩くなるかもしれないし、精神的にも余裕をもてそうだ。
「――糸井! 鳥谷! 福留! この左打者に何度、何度、ここぞという時に打たれてきたか!」
拳を握りしめてテーブルを叩く結乃。
昨年FAで加入した糸井はともかく、鳥谷と福留には何年にもわたって煮え湯を飲まされてきた。
とにかくよく打たれたという記憶しかない。打たれない場合は四球だ。
ベイスターズは彼らにアレルギーでもあるのではないかとすら思ってしまう。
「タイガースに勝つには、いかにベテラン陣を封じるかよ。特に横浜スタジアムでは面白いように打たれていた気しかしないわ!」
「スタジアムでの勝率が悪いんだよね」
「それもこれも、良く打たれて、そして相手を打てないからよっ」
エース・メッセンジャーに藤浪、能見と苦手な投手が揃っている。今は調子が悪いようだが岩貞も苦手だし、小野や青柳といった活きの良い若手もいる。特にメッセンジャーと藤浪の二人を大の苦手としているベイスターズだ。
先発に抑えられればリーグナンバーワンの救援陣が控えている。
ベイスターズ打撃陣は、タイガースの中継ぎ、抑えを全くといっていいほど打てていない。
「まさか、桑原がここまでやるとは思いもしなかったわ」
元々はベイスターズに入団した桑原が、ベイスターズでは戦力とならず放出され、渡り歩いた先のタイガースで最優秀中継ぎになるとは、かつては想像もしなかった。
「桑原の場合、二年連続で活躍できるかどうかよね。ただ、桑原が去年ほどじゃなかったとしても、マテオ、ドリス、そしてやっぱり苦手としている高橋とかいるし、中盤までに勝ち越さないと今年も苦戦は必至ね」
藤浪が昨年から不調、能見が年齢による衰えがあるとしても、手強い投手陣であることに変わりはないだろう。
「あとは意識の問題よ。タイガースに勝てないから苦手意識を持っているし、逆にタイガースからしてみれば『お得意さん』と思っていることでしょうよ。序盤で少しくらいリードされていても、『いずれ逆転できる』と思われていれば余裕もある。じりじり点を詰められ、追いつかれたら自慢の救援陣をつぎ込めば良い。そう思われているのよ、きーっ、悔しい!」
「となるとシーズン序盤が大切だね。今年のベイスターズ戦は思うようにいかないぞ、と思わせないと」
「どうやらタイガースは開幕直後の2カードめ、藤浪、能見でこちらを叩きにくるみたいね。対するベイスターズは間に合えば今永、東の左腕コンビ。ここ重要、頼むわよ二人とも!」
「いきなりルーキーにそこまで期待するのもってのはあるけどね・・・」