「さあ、いよいよ９連戦よ！」
ずびし！ という感じに、左拳を腰にあて、右手を正面に突き出して人差し指をつきつけてくる結乃。
正面から指を向けられた理衣は、思わずビクリとして腰が引ける。
例え４連敗中でも元気と活力を失わないのが結乃である。
「とりあえずローテーションを考えるわ。まあ、新聞とかでも色々出ているけどね！」
「身も蓋もないなぁ･･･」
4/28～30 中日戦 石田⇒ウィーランド⇒平良
5/1～3 阪神戦 今永⇒濱口⇒東
5/4～6 巨人戦 平田⇒石田⇒ウィーランド
「･･･メディアから出ている予想と結構違うね」
結乃の予想を聞いて首を傾げる理衣。
「同じ予想をしていもつまらないでしょ！」
「いや、面白いとかつまらないとかじゃ･･･これって予想というより、単に希望しているってだけじゃ」
「中日戦、石田、ウィーランドは固いでしょうけれど、三戦目は平良！ 二軍で結果を残しているようだし、初勝利もナゴドの中日戦だったわよね、確か。広いナゴドは打たせて取るタイプの平らにもあうはずよ！」
「聞いちゃいない･･･」
理衣の呟きなど無視して続ける結乃。
「阪神戦は左三枚で決まりでしょう！ ここは同じ予想よね」
続くタイガース戦はさすがに他の予想もなかったのだろう。結乃がぎこちなく左腕で投げるフォームをしてみせる。
スカートが捲れて細い脚が見え、理衣はドキドキする。
「濱口投手が阪神戦に相性良いしね。苦手な阪神に何とか勝ち越したいね」
顔を横に向けつつ、太腿をチラチラと横目で見ながらいう理衣。
「そのためには投手よりも打線だけどね･･･」
とにかく阪神投手陣を打てない横浜打撃陣。しかもローテ的にメッセンジャーは確実にぶつかってくる。
「甲子園のメッセンジャーとか、打てる気しないわぁ」
「巨人戦では……平田投手！？」
さすがにこればかりは聞いて驚きの声をあげる理衣。
「この前良い投球したしね、横浜スタジアムで菅野に投げ勝って初勝利、初のお立ち台！ このストーリー良くない？」
「そうなったら凄いけれど、さすがに無理があるんじゃない？」
「無理が通れば道理は引っ込むのよ！ 不屈闘志も言っていたじゃない！」
「知らんがな･･･」
結乃の愛読書を、理衣は読んだことが無かった。
「まあ、そんな先発ローテ予想を立てたわけだけど、今は守備と打撃も悪いからね、そこも問題だわ」
「打線とか変えてくるかな？」
「ラミちゃんはなかなか頑固だからね、神里、倉本を果たしてどうするのか。梶谷も戻ってきてぼちぼちの調子だし、桑原、宮本でいくのもアリな気はするけれど」
「とりあえず、出塁できるようにしたいね」
低い出塁率では足も活かしようがない。四球をある程度選ぶことの出来る梶谷には頑張ってもらいたい。
「そうそう、GW中といえば、松坂投手と対戦しそうだね。凄い、楽しみだね！」
手を叩いて喜ぶ理衣だが、結乃は逆に顰め面をする。
「楽しみは楽しみだけど、怖いわぁ」
「何が？」
「あっさり初勝利をあげられそうでさ。横浜といえば、ルーキーへの初勝利とか、故障者の復帰後初勝利とか、あっさり捧げちゃう球団だからねぇ」
「うわ、ネガティブだね」
「事実だしね。それに荒れ球と横浜の早打ち打線って、相性悪そうじゃない」
往年の力がないとはいえ、今期はそれなりに好投を見せている松坂。横浜戦ではどんな投球を見せるのか、また横浜打線がどう対応するのか。楽しみである。
「今年のGWはビジターの方が多いからね、それでも勝ち越しを狙いたいわね！」
「巨人戦にはスタジアムにも応援に行くし、楽しいGWにしたいね！」
明るいGWとなるかはベイスターズ次第。
まずは中日戦の初戦、連敗を止めて欲しい。
そのためにはふがいない投球の続いている石田の奮起が必要不可欠。
「ナゴドで強い内弁慶の中日に勝つわよ！」
「でも、ドラゴンズのチャンテ歌うんでしょ？」
「メロディが良いからね！」
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