戦力外通告① 煌めくフィールド、荒波 翔!
「今年も戦力外通告の時期がやってきちゃったね」
悲しそうにしょんぼりする理衣。
「こればかりは仕方ないわ、ドラフトで新しい選手も獲得するし、プロの世界だし」
腕組みをし、厳しい表情で言う結乃。
「そのうちの一人が背番号4、荒波翔」
「荒波さん、まだやれそうなのにね」
「とはいいつつ、今季、結果を残せていなかったのも事実。今期だけじゃない、ここ数年ずっと、ね」
もともとDeNA元年に頭角を現し、その俊足でもって外野を縦横無尽に駆け抜けた守備力は確か。
肩も強くて刺殺も多く、2年連続のゴールデングラブ賞を受賞した。
年齢だってまだ老け込むほどではない。
「怪我の影響が大きいってのは確かにあったけど」
むーん、と唸る結乃。
怪我をして脚力が落ちたのは事実であろう。
「ただ、もともと盗塁が上手いわけではなかったのよね。足は速いけれど」
「なんか、横浜ってそういう選手、多くない?」
「多いわよ。だから盗塁やスモールベースボールが出来ないんじゃない」
「あっさり認めるねぇ」
「筒香、梶谷、桑原とみんな外野にきて、乙坂、関根、神里も出てきた。左打ちの外野手は溢れ気味なのよ。それも、似たようなタイプのばかり」
「そうなると、年齢が上の選手が切られちゃう?」
「実力よ。衰えたとはいえ、守備力だったら上述した選手達よりまだ上だと思うわ。ただ、打てないとね」
渋い表情の結乃。
今季も一軍に上がり、代打中心ではあるが何度かチャンスはあったが、ノーヒットで終わってしまったのだ。
三振、ポップフライの多い打撃を改善させることが出来なかったのが一番の原因ではないか。
打てない以上、他の選手より大幅に上回るということはない。
「正直、荒波はもっと2,3年前にトレードでもして他球団に行ければ変われた可能性もあったと思うけど」
「あぁ、もう球場でタオルを振り回すことも出来ないんだね」
登場曲で盛り上がれる選手。それも残念である。
「本人は現役続行希望しているし、どこかの球団に入れると良いのだけれどね」
「本当に! ファンサービスとかも凄く良いしね!」
荒波のファンサービスのよさは、山崎ともまた違う。
近づいていって声をかけると、「あ、いいっすよ」みたいな感じで気さくにごく自然体で応対してくれる。
笑顔も自然で、ファンの列が長くなってもきちんと最後まで対応してくれる。
そういう態度に接してファンになった人も多いのではないか。
「DeNA初期を支えてくれた選手だったことに間違いはないわ。ありがとう、荒波!」
「うぅ、若いチームだけど、こういうので若返るのは寂しくもあるね」
「中堅、ベテランになれるまで育成できていないという見方もあるからね。まだまだ課題だらけの球団よ」
寂しいことだが近年の成績では致し方ないと思える荒波。
先述したように、若手の外野手が登壇して来た時に境遇を変えてあげられればというのが悔やみどころ。
とはいえ本人はそんなことは思っていないだろう。
『ダグアウトの向こう』で見せた、「自分を落としてくれ」と言っての涙。
我々は、そんな荒波が好きだったのだ。
新たな地で輝けることを願う。
煌めくフィールド 荒波SHOW!
見せてくれ 歓声浴びて翔け
さぁ疾風(かぜ)の如く