2018年振り返り #38山下 幸輝 涙のサヨナラ打でイップス克服?ムシキング
「山下選手といえばムシキング!」
「でもあれって、別に虫が特別好きというのではなく、虫が大丈夫ってことだからね」
「え、そうなの?」
「そうよ、知っておきなさい」
「ガーン! 裏切られた気分!」
結乃の言葉を聞いて、頭を抱える理衣。
「そんなムシキングの2018年成績よ!」
#38 山下 幸輝
出場試合 : 21
打数 : 63
打率 :.222
安打数 : 14
HR : 1
打点 : 3
盗塁 : 1
「まー、どう考えても物足りないけどね」
「でもでも、今年は涙のサヨナラ打! あれが印象深いよね!」
「確かに、あれは良かったわよね」
結乃も思い出すように目を閉じる。
楽天戦、筒香の起死回生のHRで同点としての延長戦。
守備に入っていた山下にチャンスで打席が回ってきた。
「追い込まれて、正直打てると思わなかったけどね」
多くのファンも、そう感じていたのではないだろうか。
「でも、打った瞬間、だったね!」
「前進守備だったしね。首も覚悟で一軍に上がってきて結果を出したんだから、感極まるところもあったでしょうね、そりゃ」
「良かったよねー、トバさんに縋って号泣して、みんなが嬉しそうに山下選手を抱いて、頭を叩いて、ね」
2017年、何度か守備固めで出ながらミスをして、イップスに陥ったという山下。
本人も辛かっただろうし、見ている方としても辛かった。
それを、ファームで懸命に練習して直してきたが、一番の薬はやはり試合で結果を出すことだろう。
「2018年は初ホームランも打ったしね!」
「とはいえ、成績的には良くないんだから、サヨナラとイップス克服で甘くても40点ね!」
「二塁は定まっていないとはいえ、ライバルも多いしねぇ」
「これ、っていうものがないと、厳しいことに変わりはないんだから!」
山下がウリにしようとしているのはユーティリティ性ということだろうか。
外野手にも挑戦しているというのは、その表れであろう。
「倉本、柴田、石川、そしてルーキーの伊藤、下手したらソト。この辺に勝てないとね」
「こうして見ると、伊藤選手は今までと系統が違うよね」
「右で、長打も放てる、打てる二塁手だからね。左の、同じようなライバルに勝ったうえで、ルーキーより上じゃないとね」
決して容易な道ではない。
それでも、希望がないわけではないのだ。しがみついてでも生き残っていくしかない。
「倉本、柴田、石川と比べると、パンチ力は山下が一番持っていそうだからね。そこを活かしていけると良いのだけど」
「バット投げも見たいね!」
「そのためには打の方で結果を出しなさい!」
あの涙と共に、過去の苦しさは流してしまえ。
今必要なのは、過去を活かしてこの先どうするかだ。
頑張れ、ムシキング山下幸輝!