「中後、投げているボール自体はそこまで悪くなかった気がするんだけどね」
首をひねりながら結乃が言う。
「アメリカから戻ってきて、経験という意味でも面白い投手だったのにね」
理衣も頷きながら言う。
期待されたのは中継ぎ左腕。
田中が蓄積疲労や怪我であがってこず、砂田、エスコバーだけでは厳しいと獲得した。
年棒も低く、活躍してくれたら面白いと思っていたのだが。
「そう上手くはいかなかったわね!」
「何度か一軍で投げてはいたんだけどね」
物凄く悪かったわけではない気がするが、良かった記憶もない。
制球力があまりなく、左打者相手に短いイニングを任されて四球を出されると厳しい。
「球威が物凄いってわけでもないから、やっぱコントロールがある程度ないとね」
「年齢的にも、見守る余裕もないもんね」
「奪三振能力は結構高かっただけに、制球力があれば中継ぎでもうちょっといけたと思うんだけど」
「投げ方も、サイドのようなスリークォーターのような感じで、左としては珍しいタイプだったよね」
「そこにこそプロで生き残る道があったんでしょうけど、結果が出なければね」
二軍では良い成績を残していた。
でも一軍では結果を出せなかった。
そういう選手だったということだろう。
「この先はどうするかしらね?」
「分からないね」
「まー、どこにいって何をしても、なんだかんだしぶとくやっていきそうなキャラよね」
「確かに、そんな気がする!」
性格的にも強く、独特っぽい中後。
新たな場所でも、らしさを出しそうだ。
「それでも、ベイスターズでヒロインも受けたことあるし、感謝よ!」
「そうだね、次でも頑張ってください!」