「良い記事だわ!」
結乃が声をあげた。
聞きつけた理衣がやってきて、結乃がみていた画面を覗き込む。
「あ、西森さん」
それは2019年オフに戦力外となった西森についての記事だった。
8年間でスタメンマスクは10試合。DeNA西森将司、去り際の笑顔と感謝。
関連記事
-
2019戦力外通告⑦ 珍しい俊足キャッチャーも突き抜けられず 西森 将司
「代走のできるキャッチャー、西森!」 「足が速いのは魅力だよね!」 と、声を揃える結乃と理衣であったが。 「・・・・でも、打力がなかったわね」 「そうだねぇ・・・・」 力なく、声を落とす ...
「キャッチャーはそうよね。正捕手になれない、一軍にあがれない、でも二軍の試合でも必要だからなかなか首にはなりづらいのよね」
捕手の人数自体、そう多くない。
重労働だし、危険も多い。
「ここでも、大村コーチとの出会いが大きかったって書いてあるね」
「筒香もそうだけど、こういう人との出会いが大事よね」
「一軍も二軍も関係ない。自分がスキルを上げるために、一日一日を後悔ないように過ごせ。野球を辞めるときになって、『あのときやっておけばよかった』と後悔することがないように」
大村のこの言葉で心を入れ替え、練習に打ち込むようになった西森。
だからこそ、育成から支配下登録を勝ち取り、
一軍にもあがり、
スタメンマスクもかぶれるようになった。
「キャッチャーとしては悪くなかったのよね。実際、記事にも書いてあるけれど、10試合のスタメンで7勝3敗と7割の勝率を誇ったんだから」
「足が速いからフットワークが良かったよね」
「ただ、あまりに打てなさ過ぎたわよね」
せめて2割くらい打っていればまた違ったであろう。
しかし西森が残した成績は22打数1安打、という成績であった。
これでは一軍の試合でなかなか出られない。
「・・・読んでいると、なんか泣けてくるね」
「心温まる記事よね!」
スポットライトのあたる選手ばかりではない。
むしろ、そうではない選手の方が多い。
それでも彼らは、彼らなりの思いを抱き、精一杯戦っている。
そういう選手に光を当てた記事。
これからも、このような記事を目にすることが出来たら嬉しいと思うのであった。