「ラミレス監督が、厳しいことを言ったね」
理衣がネットのニュースを見て口を開いた。
「んー? まあ、当たり前のことじゃないの」
結乃が欠伸を噛み殺しながら言う。
「でも、宮崎選手とソト選手だけって、厳しくない? ほら、光さんとか、ロペスさんとか」
「もちろん実績、経験からいえばレギュラーに近いことは間違いないでしょうけれど」
キャッチャーは厳しいポジションであるし、伊藤も2019後半は怪我で出られなかったこともある。
ロペスも、HRと打点はそれなりに稼いだが、打率の低さや守備の衰えが見えてきているのも確か。
「オースティンも入ってきて、野手の外国人争いも熾烈よね」
「野手三人になると、投手が一人しか出場できないもんね・・・」
年齢的にロペスは落ちてくるだろうが、それでも精神的な柱として内野にいるのは大きい。
何より、「ロペスなら捕ってくれる」という他の内野手からの信頼が大きい。
守備範囲が狭いのは、セカンドが補えば良いのだ。
「大和だって打撃が弱いのはどうしてもあるしね」
「みんな、レギュラー取って欲しいけれど、投手を除けば8つしかないもんね」
「でも、それがあるべき姿なのよ! かつては、レギュラー争いするほど選手層が厚くなかったからね!」
えっへん、となぜか偉そうに胸を反らせる結乃。
そう、かつては、他の球団だったらレギュラーどころか一軍争いをするような選手が当たり前のようにレギュラーだったこともあった。
その選手を脅かす若手もいなかった。
比べてみれば、どれだけ贅沢な悩みか。
「厳しい競争、それは逆に言えば誰にでもチャンスはあるということよ!」
「今まで苦労していた人でも、アピールすれば!」
「キャンプ、オープン戦でたっぷりアピールしなさい!」
さて、実際にだれが開幕一軍、そしてスタメンを勝ち取るのか。
くれぐれも出来レースになどしないよう、お願いしますよ!