「今永はちゃんと考え、それで結果を出しているから凄いわよね」
結乃が感心したように言っている。
「どうしたの、いきなり」
理衣が問いかける。
「これよこれ」
と、結乃が指さした先の記事は。
今永昇太、26歳。プロ4年目を支えた思考「居心地の良さを感じたら、成長が止まっている証拠」
「これはプロ野球に限らず、他でも通用することよね」
「うーん、難しいよね」
人は居心地の良い場所に居続けたいのは当然の事。
それを捨ててわざわざ居心地の悪い場所に行こうとは、なかなか出来ない。
それが成長につながると分かっていたところで、簡単には踏み出せない。
出来る人は、意識高い系で、意志の強い人、なのだろうか。
「もちろん、意識を持つだけじゃなく、力があるから結果を残せるってのはあるけれどね」
「これからも結果を残し続けて欲しいね」
「成長するためには、そのための壁とか障害があるからこそ、っていうのは確かよね。でも、あたしは嫌だけどね!」
「全てを否定するような」
苦笑する理衣。
「まあ、生きていれば普通に壁にはぶつかるわよね。その後、止まった時にどう考えるか、ね。皆もちゃんと、居心地の悪いところに身を置きなさいよ!」
「自分のことを脇に置いて言うねぇ」
今永もまた壁にぶつかるだろう。
その時にはどう行動するか。
それもまた楽しみにしたい。