「春季キャンプに行ってきたわ!」
元気よく結乃が言う。
「楽しかったね!」
理衣も笑顔で頷く。
「・・・・沖縄はどこ行ったーーーー!? なんであたしは今此処にいるっ!?」
いきなり現実に目覚め、絶望に打ちひしがれる結乃。
「最近、絶望が多くない!? そりゃ、寂しいけれど」
キャンプから帰ってくるといつも感じる思いに、浸りたくなくても浸ってしまう二人であった。
「気を取り直して。今回のキャンプは・・・・」
「キャンプは?」
「ホテルでセレモニーって、空港でやらんのかい!?」
「ああ・・・・そうだよね、せっかく待ち構えていた人たち、残念だよね」
「日ハムはちゃんとやっていたのに!」
「あの後、ベイスターズも当然、やると思ったよねぇ」
「そうそう、これ……って、これ日ハム! 翔さんや清宮くんもいるじゃない! 画像が粗いけど!」
ということで、今回のキャンプでは空港で歓迎セレモニーは実施されずにホテルで実施となった。
多くの人が知らなかったようで、ホテルでセレモニーを見たファンは10人程度だったとも言われている。
「事前に言ったら、ホテルが大変なことになったかもしれないけれど、酷い仕打ち!」
「残念だったよね」
とまあ、運が悪かったと諦めましょう。
「さてさて、今回のキャンプはといえば!」
「いえば?」
「新しく出来た室内練習場!」
「入れたわけじゃないけれど、外から見ただけでも立派だったよね!」
「もうね、すぐ隣に前の室内練習場があったけれど、並んでいるだけに古さが際立ったわよね。よくもまあ、こんなとこで練習をしていたものだと!」
「お世話になったのに、酷い言いよう・・・・」
「仕方ないでしょ、事実なんだから!」
果たして古い施設の方はこのまま残しておくのか、それとも取り壊すのか。
「そして初日といえばこれ、全員での集合写真と、神主によって市民球場が祓い清めの儀式!」
「おー、毎年やっているよね」
「外国人選手とか、絶対に意味不明よね!」
「ロペス選手やソト選手はともかく、オースティン選手、ピープルズ投手は分からないだろうね・・・・」
初日から見学に行くと、そういったものが見られたりもします。
「練習見学は基本的にいつも通りだけど・・・・」
「何か変わったこと、あるかな?」
「あ、投手のキャッチボールが、運動公園のロープ内でやるようになったわ!」
「本当だ。ちょっとした変化だね」
「まあ、それくらいならね。締め出されたりしたらつまらないから、ファンは見学するときもマナーを守るように!」
練習ちゅう、変に声をかけたり、握手を求めたり、サインを要求したりするのはやめましょう。
「見ていて面白いのはやっぱりサブグラウンドと運動公園だね」
↑特守のノック後、なぜか正座で縮こまってコーチの話を神妙に聞く、伊藤裕季也
「近いし、選手同士の話が聞こえてくるのが面白いわよね」
「話している内容もわかっちゃうもんね」
「ただ今年は賑やかしの三上が二軍だから、残念ね!」
「あー、確かに」
そんな三上は二軍でガヤ担当? だったらしい。
「変わりに今永が賑やかだったわね。まあ、いつも通りか、よくしゃべる!」
「面白かったね! 坂本投手は、”意識青天井”だって」
「よく、そういうことを言うわね。まあ、見ていて楽しいからいいわよね!」
「やっぱり間近で選手達を見られるのが楽しいね!」
「サインは遠くなったけど、あたしたちは練習メインだから、そこは諦めるわ!」
「これは、ラグビーボールで遊んでいた今永と上茶谷ね!」
「二人は本当に仲が良いんだね」
「やたらと、『リィ~~~チ!』って言っていたわね」
「選手達もラグビーWCに感動したんだね!」
サインを貰うには、長時間列に並ぶ必要がある。
でも、誰がいつ出てきてファンサをしてくれるかは分からないのである。
「さすがに練習真っただ中のお昼前から並ぶ気にはなれないわ」
「並んでいると練習も見られないしね」
とはいえ、キャンプに来たなら選手のサインがもらいたい、一言でも話したいというファン心理も当然の事。
人それぞれ、練習を楽しむもよし、サインを楽しむもよし。
「楽しかったねぇ」
「そうねぇ。そう思えば思うほど、何故! あたしは今此処にいるの!?」
結乃が大地を殴りつけて嘆く。
宜野湾のキャンプは夢か幻か。
戻ってくると、現実に打ちのめされますね。
↑朝のウォームアップ、フライングしてしまう戸柱先生
「でも、現実から逃げたい人はキャンプを楽しみに行きましょう!」
「そんな後ろ向きな思いで行くのはやめようよ!」
また、来年??