「この一か月で日本はどうなるかしらね」
のっけからそんなことを口にする結乃。
「政治的なことはやめようよ」
理衣が諫める。
「え、あたしはただ感じたことを言っただけで、政治的なことは言っていないわよ」
「危ういから、ほら。野球の話を、ね」
「そうねえ、じゃあ皆さんお待ちかね、今回は加藤将斗よ!」
「待ちかね・・・・?」
「たんほいざー?」
■横浜大洋ホエールズ
横浜ベイスターズ (1991 - 1998)
■通算 6勝 13敗
「どんどんマイナーな選手が出てくるね」
「え、そんなにマイナーかしら?」
「だって通算6勝でしょ」
「勝ち星が全てじゃないわよ!」
「それは確かにそうだけど、じゃあ、例えば?」
「巨人戦で完封勝利をしているわよ」
「おお、6勝のうち1勝が完封勝利って凄いね」
「その年は先発ローテに入って、まだ若手だったし今後が期待されたんだけどねー」
「そこは残念ながら、ってやつだったんだね」
まあ、多くの選手がそのようなものである。
良い投球をして今後が楽しみといわれ、そこから咲かない投手のなんと多いことか。
「そしてなんといっても加藤といえば、2日連続での先発!」
「え、どういうこと?」
「1994年5月13日、14日の巨人戦で2試合連続で先発したのよ!」
「そんな無茶苦茶な・・・・」
「というのも、13日の試合で打球を足に受けてわずか11球で降板したからよ」
「だからといってそんな」
「まあね、オープナーでもないのに今じゃあ考えられないわよね」
「よく投げたねぇ」
「予告先発のない時代だし、奇襲の意味もあったわよね」
「そりゃ、相手もびっくりするよね」
いくら試合で11球しか投げていないとはいえ、である。
「ちなみにその降板した試合は15-1で勝利!」
「大勝だね」
「3番手の島田直也が6回を投げ切って勝利投手!」
「ほぼ先発の役割! 継投じゃないんだ!?」
「さらに14日の試合は加藤が6回無失点で勝利投手!」
「そっちも勝ったんだ!」
「さらに加藤は「プロ野球12球団対抗新春リレーマラソン」で肉離れを起こして、それから低迷しちゃったわ」
「ああ・・・・若手で良い活躍を見せて、オフの番組に出て、それが原因で・・・・」
なんとも悲しいものであった。
やっぱり怪我は怖いです。