「一気に暑くなってきたわねー」
結乃が額を拭う仕種を見せながら言う。
「夏日が出てきたもんねぇ」
理衣ものんびりした口調で言う。
「夏服に衣替え! 体調管理を整えましょう!」
「紫外線には気を付けて!」
「対策には帽子を! 毛が薄い人とかも・・・・って、は、これは山下大輔への布石!?」
「違うよ?」
■大洋ホエールズ
横浜大洋ホエールズ (1974 - 1988)
■通算 5259打数 1378安打 打率.262 129本塁打
ベストナイン(1981年)
ダイヤモンドグラブ賞(1976年 - 1983年)
「なんといっても光る!」
「そこで区切らなくても・・・・」
「8年連続ダイヤモンドグラブ受賞!」
「これは凄いね!」
「遊撃手としては、今でも最多受賞よ!(連続も通期も)」
「本当にレジェンドだね!」
「なんといっても「慶應のプリンス」、入団した年から大人気!」
「そういう選手を獲得できたっていうのは、球団として大きいよね」
「そりゃそうよ。あまりに嬉しくて、ユニフォームまで変更しちゃったくらいだからね」
「今では信じられないね!」
山下の出身地である静岡の名産にちなみ、オレンジと緑(蜜柑とお茶」のユニフォームにした(らしい)というのは有名な話。
だが、球団としてはそれくらい待望して入団がかなった選手。
そして実際、2年目にレギュラー定着し、上述のタイトル獲得をしているのだから、結果もふさわしいものを残した。
「そして山下大輔といえばやっぱり、「大ちゃんス打線」よね!」
「そのネーミングは」
「2003年、監督に就任すると、とにかく若手を恐れず起用! 恐怖の内野陣が形成されたってもんよ!」
「どんな?」
「1塁ウッズ、2塁村田、3塁古木、遊撃石井と、投手陣を恐怖のどん底に陥れるような布陣!」
「味方の投手を、ってことだよね・・・・」
「そらそうよ!」
しかし実際、野手はそれなりの数字を残した。
森監督時代に低迷していた鈴木尚、金城も復活した。
「まあ、投手陣崩壊で最下位独走! 球団史上最低勝率をマークしたんだけど、それでも憎まれないのが「大ちゃんス打線」」
「それは、山下さんの人柄もあるのかもね」
とにかく明るく誠実、人の悪口をいわない、周りの評価は物凄く良い。
それがゆえに監督としては結果を残せなかったのかもしれないが、皆から愛されている。
そんな大ちゃんだから、「大ちゃんス打線」も愛されているのだ!
「悲劇はコックスよね・・・・」
ずーん、と暗くなる結乃。
移籍金100万ドル、年俸275万ドルの3年契約で獲得したメジャーリーガーがまさか、であった。
「まあ、そういう色々もあるけれど、ファンからも関係者からも愛されていることは間違いないはずね!」