「もうさ、シフトチェンジしていいんじゃない?」
結乃がそんなことを言う。
「ま、まだ諦める状況じゃないけれど・・・」
力なく理衣が言う。
とはいえ肝心の阪神戦で負け越して11ゲーム差。
3連勝してこその3連戦だったのに、バウアーを中4日でもってきてこれである。
「首脳陣、チームとしては最後まであきらめない姿勢を見せる必要があるのかもだけどさ」
「CSだってあるしね」
「いやもう、無理に狙ってチームがボロボロになってもねぇ。若手も起用しつつ、それでAクラスになれたら、くらいでいいんじゃない?」
「ううう、熱がない!」
しかしまあ、現実的に優勝はほぼ無理ともいえるゲーム差。
2位はまだ射程圏とはいえ、ねえ。
球団としてはCSを本拠地で迎えられるのは嬉しいのだろうが。
「とにかくスタメン、先発ローテの高齢化がどんどん進んでいるんだからさ、先のことを考えたいわよね」
「一軍は育成の場ではない、ってのはあるけれど」
「でも、二軍からあがってきた若手を起用して主力にしていくのは一軍の場でしかないからね」
「もちろん、本人の力、結果が必要だけれどね」
一軍にあげられるような若手が育っていない、というのが事実なのかもだけれど。
宮崎の怪我はある意味チャンス、そこで昇格するのが最年長の藤田というのが。
優勝を争っていて精神的に頼れる人が必要、という状況でもない。
「せっかくトレードで獲得した西浦は代打のみでスタメン起用しないし。宮崎が怪我の時こそ起用するんじゃないのかしら?」
「う、うーん」
「まあ、小深田が育っていないのが悪いんだけどね」
「厳しいですね」
ベテラン、中堅を偏重していると思われるような起用をする三浦では、若手に切り替えることもなさそう。
もちろん、勝負のためにそういう判断をしているのだと思うが、未来は見えない。若手にすればいいってもんじゃない、ってのもそうなんだけど。
「佐野の1番とかもねぇ。いつも同じことばかり言うみたいだけれど」
「ファンは見守るしかありません!」
段々、見守るというよりも、ただ見ているだけになっちゃうよ。