「みんな大好き、倉本ね!」
元気よく結乃が言う。
「なんか、含みがあるような言い方だよね」
苦笑しながら理衣が言う。
「叩かれるのは愛される証拠でもあるのよ! 雄洋とかそれを実践しているじゃない」
「実戦て・・・・」
#5 倉本 寿彦
出場試合 : 82
打数 : 199
打率 :.276
安打数 : 55
HR : 1
打点 : 17
盗塁 : 0
「2016年をピークに下がっていたけれど、今季は打撃が復調したわねー」
「打撃の好調さもあって、遊撃でのスタメンが多かったよね」
「ラミレスは打撃を重視していたからね」
「特に左投手に強いということで重宝されていたね」
何がよくなったのか。
どうして左が打てるのか。
技術的なことは素人なので分からないが、事実は事実。
「しかし倉本は本当にしぶといというか、色々と対応してくるわよね」
「それがプロで生き残る術だよね」
「あたしが今季、評価したいのは出塁率をあげたことね」
「というと?」
「チームの方針も、倉本の打撃スタイルもそうだけど、四球が少ない。でも今季は四球を選んで2016年以来の、出塁率3割越えをしたわ」
「なるほど」
四球数は16。
2016年は539打席で18個だったのが、2020年は216打席で16個。
どれだけ増えたか分かるというものだろう。
「積極的に打つのは変わらないけれど、それで四球が増えたのは進歩よね」
「本当に這い上がってきた感じだよねぇ」
「あとは長打、二塁打を増やしたいわよねぇ。55安打で長打が2塁打4本、HR1本だけだからね」
「足が速いわけでもないから、ヒットを打てないよりは良いけれど、か」
「まあ、誰かには『倉本さんは足が速い』とか言われているようだけれど」
「そういうネタはやめようよ」
「守備に関しては、まあ、まだ不安な所あるけれどね」
「ショート一本で勝負させてほしいというところが良かったのかもよ」
「サードの方が安定はあると思うけれど・・・まあ、打撃含めて結果を出したから」
とはいえ、レギュラーを確保したというわけではない。
2021も大和、柴田と定位置を争うだろう。
倉本がレギュラーに近づくには、やはり打撃で良い結果を出すしかないだろう。
「ということで今季は及第点の60点ということで」
「おー」
「でも、このままでいいわけじゃないわよ! 単打メインでも、2017年みたいに勝負強く打点を稼ぐとか、2016年みたいに3割近く打つとか、そういうところを目指したいわよね」
「それでも先は明るいかな?」
「また21年は21年で野球もどう変わるか分からないけれど、倉本なら必死で適応していこうとするでしょうし、適応すると期待したいわ」
泥臭く、頑張ってほしい。