「ハマの豆苗!」
結乃が高らかに言う。
「豆苗が有名になったよね。ちょうど私達も豆苗を入れたパスタを作って食べていたからタイムリーだったよね」
理衣は微笑んでいる。
2020年、一気にブレイクした大貫。
ホント、助かりました。
#16 大貫 晋一
当番試合 : 19
投球回数 : 113 2/3
防御率 :2.53
勝利 : 10
敗北 : 6
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 81
「チーム唯一の二桁勝利をあげたわ!」
「凄いよね!」
「開幕に出遅れ、ようやく先発した時も早い回で降板し、あの阪神戦では1回3失点KOと・・・・」
「本当に、どうなるかと思ったよね」
「二軍に落ちるかと思いきや、先発不足で中3日での先発登板で8回1失点!」
「そこから一気だったよね」
連勝を伸ばし、安定した投球でローテをまわし、二年目で二けた勝利を達成。
120試合、開幕出遅れを考えればよくもまあ10勝したものだ。
「カットボールが効果的だっていっていたわね。あとは対左の克服よね」
「低めにコントロールよく、打たせて取るピッチングがこ気味良いよね」
「相手も打てそうで打てないのかもね。手元で動くボールで、ストレートも変化球も同じフォームとも聞くわ」
「力感なく、ひょいっと投げているから相手もタイミングが狂わされるのかもね」
誰かが言っていた。
一番打ちにくいのは、キャッチボールみたいな投げ方で140~150キロとかのボールを投げられると、イメージと実体が乖離して打ちづらいとか。
だが、それは分かる。
「明らかに凄い力を入れて投げて剛速球が来るのは想像がつくもんね。かるーく、ぴゅっと投げたら快速球、とか打ちづらいわよね」
「速球みたいに思っていたらスローカーブだった、とかも同じだね」
「バッティングは結局、タイミングが重要だからね」
大貫はそのタイミングをうまくずらす、そういうことを覚えたのかもしれない。
実際、大貫が先発の時は球数が少なく中盤まですいすいといっているように見える。
「今永とか球数かさむからね、タイプが違うとはいえ、こういうのも参考にして欲しいわよね」
「スタミナ使わず、長いイニング投げてくれると嬉しいもんね」
「あと大貫が良いのは、バントとか、フィールディングとか、その辺の基本がきっちりで、自分にできることを精一杯やっているところよね」
「打席でも粘ったりね」
バッティングが得意なフォームに見えないが、それでも自分に出来ることを。
それが見て取れるから、応援もしたくなる。
「学生時代から苦労もしてきたみたいだし、そういうのが活きているのかもね」
「とはいえ、誰もここまで勝てるようになるとは想像しなかったよね」
「そうね、今季は90点つけられるわね」
「おーっ」
「21年シーズン、同じような結果が残せるかがまた重要ね」
「続けて活躍するのが難しい世界だからね」
「でも大貫は安定感をウリにしてほしいから、頑張れ!」
「豆苗、食べます!」