「20年の苦戦の原因の一つに、代打の切り札不在が挙げられることがあるわよね」
結乃が腕組みをしながら唸るように言った。
「佐野選手がレギュラーになったことゆえ、だね」
理衣も頷いている。
こんな記事も出ている。
佐野恵太の覚醒で生まれたベイスターズの“穴”。「代打の切り札」育成が来季の課題
「実際、代打で成功しているのを殆ど見た記憶がないのよね」
「19年は佐野選手だけじゃなく、乙坂選手も勝負強かったもんね」
「それが20年はさっぱりで、中井も得点圏で打てず打点が少なく、山下や神里、楠本も結果を残せず」
「神里選手はスタメン出場では打っているけどね」
ここぞ、というときの代打。
確かにいないが、それは深刻な問題なのだろうか。
「結論を言えば、代打に頼らなくても勝てるスタメンなら良いのよ!」
「うーん、それが出来れば苦労はしない・・・・」
「いや実際、代打で勝負が決まる試合って、年に何試合ある? それよりスタメンで点を奪えていて、投手が抑えられていれば良いわけで」
「それはそうだけど、理想論じゃあ?」
「優先順位よ! 代打も重要だけど、それが最重要じゃないってことで」
「まあ、代打の前にスタメン、レギュラーだよね」
「その後に代打。候補はやっぱり、左は楠本、右は蛯名を挙げたいわね」
「そのこころは?」
「二人ともドラフトは下位指名。即ち、佐野と同様に打撃をかわれての入団のはずなのよね。だからまず、打撃でアピールしてそこからスタメン、レギュラーを目指すべき立場と思うから」
「なるほどねぇ」
そして実際、それだけのポテンシャルは持っていると思っている。
- 楠本のバットコントロール
- 蛯名のシュアながらもパワーのある打撃
外野争いは混戦なわけで、ならば打撃からアピールするのが一つの方法。
「ということで、代打の切り札が最終目標じゃないにしろ、まずはそこで信頼を勝ち取りなさい!」
「そして、佐野選手コースだね!」
「まあ、そんな簡単じゃないけれどね。外野で空いているのセンターだけだから・・・」
「レフト、ライトで守備固め出来るように!」