「濱口かー」
不満そうな口調の結乃である。
「ほらほら、張り切って振り返っていこうよ」
励ますように理衣が言う。
そんな濱口の2020年成績はこちら。
#26 濵口 遥大
当番試合 : 16
投球回数 : 78 1/3
防御率 :4.60
勝利 : 6
敗北 : 5
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 67
「表題にもある通り、あらゆるところで物足りない!」
「ま、まあ、数字はそうだよね」
「先発ローテを最後の方まで回してくれたといえば聞こえはいいけれど、たいていは5,6回で降板だからねー」
「長いイニングを期待していたもんね。6回の壁が大きかったね」
「もちろん、球数が多いタイプってのは分かっているけれど、それにしてもねえ」
実際、78イニングを16登板で割ると、5イニングにも満たないのだ。
「シーズン後半は序盤KOも多く、困ったわよ」
「最初は良い感じだったんだけどね」
「最初だけね。ということで点数は50点くらいね。ローテをある程度回してくれたことを勘案してね」
「まあ、仕方ないかぁ」
怪我をしているわけではなかったはず。
今永、東が故障で不在の中、先発左腕としては引っ張ってもらいたかったが、期待には応えられなかった。
「スタイル変えているのか、そうじゃないのか分からないけれど、気になるのは三振が減ったことよね」
「チェンジアップをあまり使わなくなった?」
「チェンジアップに頼りすぎはよくないというのはあるけれど、これまで投球回数を上回る三振を奪っていたのに、明らかに少なかったからね」
「打たせて取る方向に切り替えたのか、奪えなくなったのか」
ストレートの威力が落ちたようにも感じた。
その分、制球力が上がったかというとそういうわけでもなく。
となれば必然的に打たれる可能性も高くなったということか。
「濱口はどうなりたいのかしらね。あたし的には無理に制球力を磨くのではなく、荒れ球でも威力のある直球と、チェンジアップを主とした変化球でいいと思うんだけど」
「ただそうする球数が多くなって長いイニングを投げられないから・・・・ってのはあるんだろうね」
「今までのスタイルだとどうしても先発4,5番手、とかになっちゃうのは確かだけれど」
「本人としては更なる向上を目指して!」
「長所を伸ばすなら良いけれどね。最低限の制球力にして、以前までのスタイルじゃ駄目なのかしら」
「本人とチームがどう考えているのか、かなぁ」
今永や東など他の左腕とタイプが異なり、ルーキー時代はパリーグ相手にも強さを誇っていた。
その濱口では駄目か。
「本人も考えているでしょうし、この成績で良しとするはずもなし、巻き返しに期待するわよ!」
「21年も今永投手、東投手は厳しいから、左腕を引っ張ってもらわないとね」
「そうそう、力はあるはずなんだから」
あとは、髪の毛はどうするか。
伸ばすのは、やめたら?