「代打一本でまずは勝負することにした山下ね」
腕組みをし、目を閉じた状態で唸るように言う結乃。
「頑張ってほしいよね!」
祈るように言う理衣。
背水の覚悟で臨んだシーズンのはず。
はたして。
#38 山下 幸輝
出場試合 : 39
打数 : 46
打率 :.209
安打数 : 9
HR : 0
打点 : 1
盗塁 : 0
「序盤は頑張っていたんだけどねー」
「代打として結果も出していたよね」
「ただ、長続きしなかったわね」
「残念・・・・」
「とはいえ序盤がなかったら、本当に戦力外だったかもだからね。19年は一軍出場も無かったし、そういう意味で40点あげましょう」
「甘いんだか厳しいんだか・・・・」
「生き残るために、まずは代打の枠を狙ったのは良い判断だったと思うのよね」
「佐野選手がレギュラーになって、空いたといえばあいたもんね」
「実際、そこは弱かったわけだし。ただ、埋めることは出来なかったけどね」
「やっぱり難しいよね」
一打席で結果を出すことの難しさ。
一朝一夕で代打のスペシャリストが生まれるわけもない。
「21年も、基本は同じ方向性で狙っていくと思うけれど」
「どういう気持ち、技術で立ち向かっていくか、かな」
「あたしたちはどうこう言えないけれど、シーズン序盤は何が良かったのかしらね」
「無心でとにかくがむしゃらにやったせいかもね」
「一時的にはそれで良いけれど、通年で結果を出すにはやっぱり何かしら芯が必要よね」
「うーん」
代打としては打点が1というのも寂し過ぎる。
打率が多少低くても打点を稼げるとか、なにかしら見せて欲しい。
「ムキムキに鍛えるのも良いけれど、あとはやっぱり技術よね」
「なんとか、頑張ってください!」
ファンとしてはそう言うしかない。
チャンスは与えられた。あとは、それを掴めるかどうか。
まだまだ背水は続くが、前を向いて頑張れ!