「進藤、印象が薄いわよね・・・・」
はかなげな口調で結乃が言う。
「そ、そんなこと言わないで! ね、ほら!」
懸命に盛り上げようとする理衣。
なかなか苦しい立ち位置の進藤である。
#43 進藤 拓也
登板試合 : 5
投球回数 : 5 1/3
防御率 :5.06
勝利 : 0
敗北 : 0
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 8
「大卒、社会人出身の四年目でこの成績は苦しいわよね!」
「19年、20年とも5試合の登板だもんね」
「ということで、点数としては15点よ!」
「厳しいけれど仕方ない!」
「ドラフトも下位だし、戦力外となってもおかしくないようだけど、それでも球団は残したわ」
「肘のクリーニング手術もしたもんね」
「だからといって悠長に待ってくれるわけでもないわよ。手術後の状態次第ではあるけれど、21年に結果を出すか、あるいはそれに近い内容を見せてくれないと、立場的にはまずいわね」
「頑張ってほしいけどね!」
そんな状況で残されたのは、やはりサイドスローというところだろうか。
加賀が引退し、寺田、水野と戦力外になっていき、残っていた進藤と藤岡。
ベテランの域だった藤岡よりも、進藤の方を選択した、ということなのだろうか。
「球の威力はそれなりにあるからね。あとは制球よね」
「ある程度の制球がないとね」
「あのドタバタしたフォームだからねぇ、細かい制球はつかないと思うけれど、最低限があれば」
「リリーフとしては面白い存在になりそうだよね」
- 大きな体をばたばた動かしてのサイドスロー。
- 眼鏡。
- ブルーバード。
色々と突っ込みたい要素は満載である。
あとは、野球で結果を残さないと。
「いまだ、1軍では数字として残しているものがないからね!」
勝利も、敗戦も、ホールドもない。
そういう状況下でしか投げていないということだが、それならもっと若手に投げさせたいのもある。
だからこそ、21年は背水の立ち位置だろう。
「まずは怪我をきっちり治して、『お、これは!?』と思わせる投球を見せられないとね」
「進藤ここにあり! ってところを見せて欲しいね」
「本人だって、これで終わりで良いなんて思っていないでしょう? 爪痕を残せ!」
生き残りをかけたシーズン。
「逆算」して何をすべきか考え、立ち向かってほしい。