「ここのところ雨で中止が多いわね」
空を見上げて結乃が言う。
「早い梅雨入りだねぇ」
理衣もまた天を見上げる。
これで3カード連続で雨天中止が発生した。
10周年記念のイベントカードであるが、残念なことである。
「まあでも、記念カードでこれ以上無様な試合を見せないで済むと思えば・・・」
「またそーゆーことを言う」
「事実だし!」
「でもほら、光さんが上がってきたから!」
「伊藤光ただ一人でどうこうできるレベルじゃない気がするけれど、投手をリードするという点では全体に波及するかもね」
「そうそう、何せ守備の要、そこから皆に指示を出すわけだし」
「初戦も、きびきびした動きを見せてくれたしね。投手への返球とか素早くテンポよく」
「ああいうのがいいいよね!」
「そして伊藤といえば、こんな記事もあったわよ」
「トバに謝ってください!」伊藤光、戸柱、嶺井…ベイスターズ捕手陣のプライド
「さすが光さん、行動もイケメン!」
「確かにね、これは惚れるわ!」
実際に行動に起こすことが出来るのが凄い。
熱い男だし、自分の考えをきっちりもって行動する。
だからこそ、ぶつかることも多いのかもしれないが、若手などからは信頼されるだろう。
「本来ならコーチとかがやって欲しいけどね!」
「光さんには将来、コーチになって欲しい・・・」
「将来といわず、もう兼任でいいわよ。肩書つけなくてもいいから、みんな、光に聞きにいきなさい!」
「それは、さすがにちょっと・・・光さんがやりにくいでしょ」
しかし正直、今季に関しては伊藤光と今永の昇格が最後の希望のピースだろう。
あとは平良か。
だが今永にしても平良にしても先発投手で週1回の先発ということを考えると、毎試合スタメンで出場し、投手陣をリードし、味方の守備を統率する伊藤の方が影響力は大きいといえる。
「怪我あけだし無理はさせたくないけれど、期待はするからね!」
「思う存分、暴れて欲しいね」
「ベンチでぶつかることも少なそうだし、思った通りにやっていいわよ、もう!」
それがどう出るかは分からない。
が、最下位独走中なんだから、そうそうこれ以上は悪くならないだろう。
「本当に、光になってよね!」