「武藤は横浜に来てくれて助かったわね!」
結乃がうなずきながら言う。
「色々なところで投げてくれたもんね」
理衣も深くうなずく。
中日を戦力外になった後、横浜にやってきた。
主にビハインドでの登板。
ロングリリーフをこなし。
時には接戦、リードしている時にも投げ。
オープナーもこなした。
「数字はなかなかつかないけれど、どこでも文句を言わず黙々とチームのために投げてくれたからね!」
「好投しても勝利もつかなかったり、ヒーローにもなれないポジションだしね」
「先発が崩れてロングリリーフで好投したとき、チームさえ勝てばヒロインに呼ばれたのになー、ってときはあったけれどね」
「それでも、オープナーの時とかお立ち台に呼ばれたよね」
その辺はチームとしても評価をしていたのだろう。
中日時代よりストレートの威力が増し。
チームにはなかなかいないシュートの使い手としても重宝した。
「まだ衰える年齢じゃないけれど、今季は二軍でも数字が出せなかったから、数字的にも立場的にも致し方ないわよね」
「残念だねぇ」
「投げるポジションとしたら、やっぱり、より若い投手にやってほしいしね」
「そこで数字を残せていたらまた違うんだろうけれどね」
「どうしても1年1年の数字で勝負かかるからね」
「それでも4年間? 助かったからね!」
「キャンプでも楽しませてくれたしね」
「見ていて和むねー」
「中日投手物まねとか、若手にまじって一人マイペースで走る姿とか」
「見られなくなるのが残念!」
「それでもこうしてセレモニーまで実施してもらえるのはごく一部の選手だからね。十年以上頑張ってきたご褒美よ」
「中日の選手からもメッセージもらって、一緒に写真撮って、ああいうのってよいよね!」
「まだまだこれから人生長いんだし、平田が言っていたようにお腹を大きくしすぎないようにね!」
「平田さん・・・」
横浜にきてくれてありがとう、武藤!