「ああー! なんてこったい!」
結乃が頭を抱えて叫ぶ。
「恐れていた怪我が起きちゃったね」
理衣も肩を落とす。
巨人とのオープン戦。
試合自体は1-1の痛み分けだが、それ以上に痛かったのが森の負傷退場である。
1塁ランナーで、楠本の二塁打で一気に本塁に行こうと3塁を回ったところで転倒。
そのまま起き上がれずに交代してしまった。
「捻挫なら良いのだけど、変にアキレス腱とかやっちゃうとヤバいからね」
「軽症であることを祈ります!」
「結果を出していただけに本人も辛いだろうけれど、若いから怪我を治すことを最重要にしてほしいわね」
「無理して悪化とかもさせないように!」
こればかりは診断の結果を待つしかない。
「試合の方は先発の大貫が3回1安打無失点と、まずまず順調ね」
「安定だね!」
「球数が多かったのだけかしらね」
「ここからさらにキレとか精度をあげていってほしいね」
「二番手のロメロがやや乱調で、いきなり3連打で無死満塁のピンチになっちゃった」
「それでも犠牲フライの最低限に抑えたからね」
「この試合だけじゃ分からないけれど、2イニング目は無難に抑えたし」
「ロメロ投手もこれからどんどん上げていってほしいです!」
以降の投手は無失点リレー。
「昨年のドラ1入江も1イニング無失点。やっぱり中継ぎの方が良い気はするわね」
「球もよかったみたいだしね」
「セットアッパー、そして抑えと、そういう方向に行けるとチームとしても良い気がするけれど」
山崎、三嶋の次の抑えとして若い投手が出てくれるとチームとしてありがたいのは確かである。
「打線は8安打したけれど、細川の犠牲フライのみ、か。相手と同じような攻撃ね」
「こちらも無死2,3塁だったもんね」
「他もね、初回は盗塁を2回試みていずれもアウト!」
「なかなかそううまくはいかないよね」
「スーパーカートリオの、3アウト全部盗塁死を思い出すわ!」
「でも、オープン戦でやっておかないとね」
「去年も同じことやっていたけどね・・・」
他にもダブルプレー、さらに楠本の牽制死と、まだまだなところも多々あった。
「意識は変わっても、やっぱりほんの数か月ではうまくいかないわよね」
「でも、盗塁じゃなくて走塁、だよね」
「そう、脚の遅い選手でも、相手の隙をついて一つでも先の塁を目指す意識で!」
「そうすればかわるはず!」
これで沖縄オープン戦は1勝1敗。
この後は横浜に戻ってきてになるが、やはり気になるのはけが人。
森はまだ主力というわけではないが、佐野、今永ときているだけに、一軍クラスをこれ以上は失いたくない。
「とにかく、これ以上は怪我人出さないように!」
「一生懸命やる以上はリスクあるけれど、なんとか防ぎたいね」
頼みます。