「藤田も現役引退ね」
結乃が重々しく頷きながら言う。
「お疲れ様でした!」
理衣は労いを込めて言う。
プロ最終シーズンの成績は以下の通り。
#23 藤田 一也
出場試合 : 23
打数 : 21
打率 :.286
出塁率 :.348
安打数 : 6
HR : 0
打点 : 0
得点 : 0
盗塁 : 0
OPS :.681
「数字としてはボチボチとも見えるけれど、それでも一線級の投手相手だとやっぱり厳しかったわよね」
「それでも左の代打として頑張ってくれたよね」
「ただ、チームの左の代打の一番手が藤田じゃあ、やっぱりまずいわよね」
「若手が押しのけてくれないとね」
藤田の代打起用が色々と物議をかましたというか、ファンからも色々と言われていたことは事実。
ただ、そのこと自体に藤田に罪はない。
藤田を使わざるを得ないチーム状況にしてしまった全体に責任があるのだろう。
「もともと藤田の売りは守備でもあったしね、その守備でセカンド、ショートを守れなかったのが引退理由だしね」
「やっぱり本人の自負もあるだろうしね」
「それでも最後に横浜にきてくれたのは有難かったわね」
「ねー、もう二度と横浜には来ないかも、そう思ったりもしたもんね」
あの、突然のトレード。
涙の別れ。
もしも藤田が残っていたらどうなったか、そう考えないことはない。
「そこを今さら言っても仕方ない、まだ横浜に残って指導者になるわけで、まだまだ頼むわよ!」
「若手の内野手も伸び悩んでいるからね」
「徹底的に守備を鍛えて欲しいわ!」
ゆくゆくは監督を目指して。
これからも頼みますよ、藤田さん。