「ルーキーと大和さん以外の新戦力だと、誰が期待大とかあるの?」
「うーん、難しいところね。でも、中であげるとしたらやっぱりソトかしらね。あ、“ミスター・ビーン”似のエンジェルベルトさんじゃないわよ?」
「いや、言っていることがよくわからないんだけど……」
結乃の例えが理解できずに困惑の笑みを浮かべる理衣。
とりあえず分かったのは、新外国人として入団したネフタリ・ソトが期待できるということか。
「期待できるというか、比較的期待度が大きいというか。いずれにしても外国人選手はふたを開けて見ないと分からないし、オープン戦の結果は信用しないわ。去年のシリアコの例があるからね」
2017年、オープン戦で首位打者を獲得したが、シーズンに入ったら全く打てなかった助っ人を思い出して苦い表情をする結乃。
「ただソトはなんだかんだいって3Aで実績があるから、独立リーグのシリアコよりは実力自体は確実に上よね。ロペスとプーさんがいるから守備位置的に困るけれど、バックアップとしては良いのではないかしら」
通年出場すれば、ホームランも15~20本くらい打てるのではないかと期待も持てる。交流戦でDHが採用されれば出番も増えるだろう。
「あと、ウィーランドが軽症とはいえ離脱しただけに、なんだかんだとバリオスも重要度が高いわよね。日本のプロ野球経験があるのも大きいし、便利屋になるかもしれないけれど5勝くらいしてくれたら素晴らしいわ」
枠の兼ね合いがあるから、そこまで勝つのは難しいかもしれないが。
「外国人選手だとその二人だよね。あと日本人選手は?」
「うん、ぶっちゃけ戦力としては考えていないから」
「つ、冷たいね」
「いやいや、よく考えてみなさいよ。中川、武藤、二人とも他球団を戦力外になったのよ。それをいきなり戦力UPとして期待、計算する方がおかしいでしょ。あくまで二人はプラスαになったら儲けもの枠よ。もちろん、頑張ってほしいし力いっぱい応援するわよ」
この辺、なんだかんだと結乃は現実を見てもいるのだ。戦力外通告を受けたということは何かしら理由があるわけで、他の球団に行って大活躍できるようなら最初から手放すとも思えない。無論、ヤクルトに入団した坂口のような例もあるわけだが。
「他の選手だって、いきなり他球団戦力外選手に居場所を取られるようなことになられても困るのよ。でもまあ、結果を出したもの勝ちだし、中川は手薄な右の代打、武藤はどれだけいても困らない中継ぎ、出番はあるでしょうから、そこでどれだけのものを残せるかよね」
頑張ってほしいと思う。
だけど彼らが頑張るということは、他の誰かは結果を残せていないということになる。それはもしかしたらあの選手かもしれないし、違う選手かもしれない。そうした選手たちは厳しい状況に置かれることになる。
勝負の世界、実力の世界と分かっているけれど、切なくなる。
「でもまあ、二人にも、他に負けないモノがあるわよね、確かに」
「え、どういうところ?」
尋ねると、結乃は得意げに答える。
「中川は……なんたってイケメンよね! 熊原とか乙坂とかとは別タイプの!」
「そ、そっち系? じゃ、じゃあ、武藤さんは?」
こちらはビジュアル勝負ではないだろうと思って訊いてみると。
「ああ、武藤は、“田島の真似”とか言って投げるのが面白いわよ。公式戦ではやらないと思うけど」
「…………」
特に口にするべき言葉の見つからない理衣。
ただいずれにしても新たにベイスターズに入団選手が、少しでも活躍して居場所を見つけられたら良いなと思うのであった。