戦力外通告⑥ 不発に終わった島根のジャイアン 白根尚貴
島根のジャイアン、そう呼ばれた白根尚貴が戦力外通告を受けた。
ソフトバンクでの育成契約を断ってまでトライアウトを受け、念願の支配下登録を横浜で獲得した。
「トライアウトを受けても、どこも獲得してくれないリスクもあった。それでも受けた心の強さは確かなんだけどね」
腕を組んでかつてのことを思い出すように言う結乃。
「右の代打枠として期待していたんだけどね。まだ若いのに」
「何かしらで判断したんでしょうね」
球団としては後藤の後釜として考えていた筈だが、そこに中川がやってきたせいもあるのかもしれない。
「思い起こすのはオリックス戦でのプロ初ヒットが初ホームランの試合」
「あ、球場に観に行っていたね! 大勝した日だよね」
「そうそう、丁度、戸柱が無双していた頃ね・・・・懐かしいわ、戸柱・・・・」
「ちょ、戸柱先生はまだいるからね!」
「え、ええ、そうね。で、大勝していたからこその出番、気楽だし、相手もちょっと切れていたのはあるでしょうけど」
「それでも、打った瞬間! だったよね」
「ヒーローインタビューにも呼ばれて、ここからプロとしての本当の生活が始まる、ってとこだったんだけど」
結局、それ以降はあまり機会も得られなかった。
「まあ、2018年は2軍でもさほどの成績じゃないし、自慢のパワーでもホームラン1本。厳しいわよね」
「もう1,2年、見るという手もあったとは思うんだけど」
「とはいえ、支配下枠はあけないといけないし、同様の他の選手と比較したり、今の成績と今後を考えての判断だと思う」
前述したように、右の代打では中川の方がまだ結果を出している。
確かに右の大砲候補は他に細川くらいしかおらず、というのはあるが。
あとは、自前のドラフトで獲得した選手ではない分、シビアに見られるというのもあるかもしれない。
「まだ若いし、他の球団に行けるかわからないけれど、またトライアウトを受けるなり、BCリーグで力を付けるなり、そういう手もあるけどね」
「どうするんだろうね?」
「自ら育成契約を断ってトライアウトを受けたくらいですもの、また信念を持って動くでしょう。仮に野球の道を離れるとしても、そういう意思の強さはきっと役に立つはずよ!」
「どういう道を選ぶにしろ、頑張ってほしいね」
プロ野球選手でいたいなら諦めずに頑張れ、白根。