「ハーパーに続いて、印象に残っている選手を!」
結乃がのっけからテンション高めに言う。
「お、そういうシリーズ?」
理衣も追随する。
「印象に残っているというか、印象に残っている試合で活躍した選手、かもね」
「というと、誰だろうなー?」
理衣は顎に指を当て、首を傾げて考える。
「それはこの人、二村忠美!」
「うーん、それは予想できなかった!」
■横浜大洋ホエールズ (1990 - 1992)
■通算 1972打数 469安打 打率.238
新人王(1983年)
「おー、新人王をとっているんだね」
「日ハム時代だけどね」
「ホエールズにきて活躍したの?」
「いんや」
「あら」
「でも、忘れられない試合が! あれはそう、1991年4月6日・・・」
「あ、また語り出した!」
「プロ野球開幕戦、相手は阪神タイガース、場所は横浜スタジアム」
「おお、開幕戦!」
「先発は中山と野田、エース対決! 試合もそれにふさわしく両投手が好投、中山は9回3失点!」
「おお!」
「しかし相手の野田は8回まで2失点! 2-3のまま9回裏に!」
「緊迫だね!」
「最終回、反撃したいホエールズだけど、野田の前にあっさりと二者凡退と追い込まれる!」
「うーん、でも諦めない! 野球は二死から!」
「そうして最後に出て来たのは代打、二村! 正直、駄目やコレと思った人も多いはず」
「酷いね!」
「阪神ファンも勝ちを確信していたことでしょう。エース野田の完投で開幕勝利! デイリーの見出しが浮かぶよう!」
「そんなの嫌!」
「そう、するとなんと代打・二村が野田の投球を一閃! 二死無走者から、代打同点ホームラン!」
「うわーお!!」
ファンですら信じられないような、値千金の同点弾。
これで負けるわけにはいかないホエールズは、11回裏にパチョレックのタイムリーでサヨナラ勝ちする。
「お立ち台によばれたパチョレックはこう言ったわ。『自分の仕事は簡単、溜まっていた(満塁の)ランナーを返すだけ。それより、フタムラを褒めてくれ!』と」
「おおー、格好良い!」
「この試合ではレイノルズも4安打デビュー! 開幕戦でもあったし、とにかく盛り上がったわね!」
「うーん、確かに印象に残るね!」
「この勢いで4月は首位ターン!」
「おお!」
「終わってみたら5位フィニッシュ!」
「おお・・・・・」
「まあでもこの年は開幕から夢を見られたわ!」
「それでいいの!?」
夢を見られただけでも良かったとしよう。