「さあ、新人の合同自主トレが開始したわよ!」
結乃がガッツポーズを見せながらいう。
「全員、参加できてよかったね」
理衣は微笑みながら言う。
まずは怪我などアクシデントなく、8人が全員そろって参加できたことを喜ぼう。
特に今のご時世。
「初日から、緊急事態宣言の日だからね」
「なんとも、だよね」
寮とDOCKの行き来だけであれば、そうそう危ないことはないとは思うが、油断はせずに。
いつ、どこで罹患しても不思議ではない状況なのだから。
「そんな中で、三浦からの挨拶があったわね」
「良いことを言っていたよね!」
「重要なことよね!」
「いきなり目の前のことではなくて、目標に何があるから、それを達成するためいつまでに何をしなければいけないか」
「決して珍しいことを言っているわけではないけれど、実際に実践するのは大変なことよ」
「そうだよね、日々の生活で忘れちゃうよね」
だが、社会人にしても学生にしても、この思考法は大切。
1年後や3年後といった中長期的な目的、目標を定める。
でもいきなりそこには到達できないから、段階を踏んで目標を置いていく。
会社であれば、中期経営計画があり、その最終目標を達成するために年度の経営計画があり、更に半期の目標があり・・・
となるわけだ。
「選手なら、例えば10年後はどうなっていたいか。そのために5年後、3年後の姿から、1年後の姿を思い浮かべていくとかね」
「実際に進めていく中で、違ったら修正していけばいいわけだね」
「そりゃそうよ。全てが予定通りにいくわけでもないし。でも、安易な変更は駄目よ!」
「なんか真面目な話になったね」
野球選手もその手の思考は持ってほしい。
実際、25年の現役生活で活躍した三浦の口から言われたことなら、説得力だってあるわけで。
「さあ、あたしたちも実戦よ!」
「じゃあ、例えば?」
「21年はリーグ優勝に日本一!」
「それは違うんじゃ・・・・」