「康晃のクローザー復活に向けた記事がいくつも出ているわね」
ニュースを見ながら結乃が言う。
「やっぱりクローザーに対する想いは強いみたいだね」
理衣も頷く。
ルーキー時代から務めてきた抑えの座を、不調から降りざるをえなかった。
その後、2021年は中継ぎとしてある程度の成績を収めて上昇傾向にはあるが、抑えに戻るにはまだまだ物足りない。
「でも、ベイスターズとしたら康晃が抑えの方がやっぱり良いと思うのよね」
「盛り上がるもんね!」
9回、康晃JUMPでの盛り上がり。
特にスタジアムならば、あれは、相手球団をのみこむ強さがあるだろう。
「色々な選手が、歓声は横浜スタジアムが一番凄い、っていうからね」
「あのすり鉢型の形状が、効果的なんだろうね」
「ただ声援だけじゃ抑えられないからね、投手として成長を見せないと」
「どうすればよいのかな?」
「本人も言っているけれど、ストレートとツーシームの質の向上、なのかしらね」
「基本に立ち返って?」
「1イニングを全力で抑えるクローザーは、球種が少なくても構わないけれど、その質が高くないとね」
「山崎投手の場合はストレートとツーシームだね」
しかし、若い頃は通用していたツーシームが見極められるようになって空振りを奪えなくなり。
150キロくらいのストレートでは、わかっていれば打ち返される。
これでは抑えられない。
「まず基本は質の良いストレートよね。直球があってこそ変化球がいきるわけで」
「良いストレートも持っているしね」
「ただ、それが連続しないのよね。1球目よくても、決め球でコース甘くなったり」
「プロだと、それも見逃さないよね」
「あと、絶対的に空振りがとれるほどのストレートでもないし」
三振の奪取率が落ちている。
クローザーなら、やはり狙って三振を取れるようにならないとなかなか厳しい。
「本人もわかっているとは思うし、コーチもわかっているでしょう。あとは、どんなトレーニングをして、実現を果たせるかどうかよ」
「ファンは待っています!」
ルーキー時代からの活躍、チーム貢献は間違いない。
故障もなくずっと働き続けてくれていることもわかっている。
それでもプロは結果を出し続けなければならない。
頑張れ、山崎康晃。