「嶺井がFAしたわね」
結乃が腕を組みながら言う。
「選手の権利だけれど、チームを離れることになったら寂しいよね」
理衣が複雑な表情をしている。
2022年はもっともマスクをかぶり、チームの2位に貢献した。
オーソドックスなリードとはちょっと異なる強気のリード。
独特の滑舌とキャラクターで人気もある。
「とはいえ、がっちり正捕手、というわけでもないからね」
「ソフトバンクさんが獲得意思を表明しているね」
「複数年契約に、年俸も横浜よりずっとよさそうよね」
「うう、条件面では厳しいかも?」
横浜では、伊藤光と戸柱の方が年俸が高い。
来季、また3人で競うわけだろうし、年俸が大幅にあがるまでいくとも思えない。
となれば、評価してくれるソフトバンクに行きたくなるのも分かるというもの。
「あとは情に訴えるか、というところよね」
「行ってほしくないね!」
「伊藤や戸柱とリードの傾向が違うっていうのは、何気にね」
「意外性のある打撃もね」
チームとしてはいてもらいたいけれど、待遇を大幅にUPできるほどではない。
絶対的に替えがいないというわけでもない。
悩ましいところだろう。
「嶺井もまだ悩んでいるのかしら? 宣言した時点で移籍の可能性は高いけれど・・・」
「あとは情に訴えて! ファン感もあるし!」
「とにかく、ちゃんと考えて決断してくれたらそれでいいわ!」
「嶺井選手の結団を尊重します!」
出て行けとは思わないし、仮に出て行ってもそこで頑張って欲しいとは思う。
でも、残ってくれたら嬉しいですね。