2019年振り返り #46 手術して復帰にかける 田中健二朗
「健二朗は手術してどうにか復帰してほしいわね!」
「初めてCSに出場したときの功労者だもんね」
結乃と理衣が互いに言って頷き合う。
怪我で一年間、登板できなかった健二朗。
成績はもちろん、残っていない。
#46 田中健二朗
当番試合 : 0
投球回数 : 0
防御率 :0.00
勝利 : 0
敗北 : 0
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 0
「でも本人も言っていたけれど、戦力外も覚悟の中、育成契約できてよかったわね」
「球団代表から『今後も長く野球を続けられるように(同年にトミー・ジョン手術を受けた左肘を育成契約の期間中に)しっかり直して欲しい』って言われたんだって」
「やるじゃない! 昔の球団だったら考えられなかったわよね」
中継ぎでの登板過多が一つの原因とも考えられるだけに、球団も責任をもったのだろう。
「もちろん、手術して完全に治る保証はないけれど」
「やらなかったらゼロに近いもんね」
本当ならもっと早くに決断したらよかったのかもしれないが、手術をしたら長期間、棒に振ることになる。
本人はそれを恐れていたのだろう。
「2016年の活躍は忘れないわよ! あの年、身を粉にして投げてくれた須田と健二朗がいたから球団で初めてCSに行けたんだから!」
「特にジャイアンツさんとのCS3戦目、鈴木選手を牽制で刺したとき!」
「あの時は鳥肌がたったわよね!」
「現地にいたけれど、健二朗さんコールが凄かったよね!」
今でも鮮明に思い出せるあのシーン。
3戦目、決勝打を放ったのは嶺井だったが、試合後半のジャイアンツペースを変えたのは間違いなく健二朗の牽制だった。
「リハビリで時間もかかるでしょうけれど、是非、またマウンドで相手を睨みつけて欲しいわ!」
「笑わないけれど、ファンには優しいんだけどね」
「なんでファンサのときも笑わないのかしらね」
「でも断ることなく丁寧に応対しているけどね」
まあ、それが健二朗の味である。
ニコニコしている健二朗など、健二朗ではない。
「背番号から0が取れる日を待っているわよ!」
「ハマスタのマウンドで投げて欲しい!」
その時はおそらくファンの大歓声に包まれることだろう。
ウィング席も全て完成した、360度からの大歓声に。