「飯塚も戦力外ね」
落ち着いた様子で結乃が言う。
「うーん、残念!」
理衣が肩を落として言う。
「とはいえ、まー、想定通りだけどね!」
「冷たいね!」
「いやいや、個人的には昨年でもう危ないと思っていたからね」
「うーん、期待されていたんだけどね」
高卒のドラフト下位ではあったが、球団からは期待されていたように感じた。
先発のチャンスも何度も貰って、好投したこともあった。
だがめぐりあわせも悪く打線の援護なく、後の中継ぎが打たれて勝利投手が消えることも。
「そういうことを繰り返しているうちに結果も出なくなったわね」
「でも、球速はすごいあがったんだよね」
「ただ150kmの速球を投げれば打たれない、わけじゃないからね」
「プロの世界だもんね」
球速はあがったけれど、今のプロ野球で150kmは珍しくもなんともない。
数字だけあげても意味がなく、いかにキレのあるストレートを投げるか。
良い変化球があるか。
制球力があるか。
「飯塚はどれも中途半端で、これってものがなかったからねぇ」
「三浦投手タイプ、とも言われていたんだけどね」
「色々な球種を扱って打ち取るタイプだとは思うけれど、三浦のような制球力はないというか、むしろあまり良くなかったでしょ」
「成長度合いがいまいちだったのかなぁ?」
二軍でもなかなか通じなくなって。
中継ぎでも打たれて。
今季は手術に踏み切ったが、結局は戦力外となった。
致し方ないところだろう。
「若い選手だとなんとも厳しいけれど、まだ若いからこそ次の人生を頑張れってところよね」
「どんな道に進むかはわからないけれど、頑張ってください!」