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【ベイスターズ小説】青き星たちの反撃 5.<過去>暗黒の始まり

更新日:

 

 2002年

「はぁっ!? なんだよ、この成績はっ」

 思わずそう叫びたくなるような数字を見て、巡はため息をついた。
 ネットで見る横浜のチーム成績、その勝率は五月時点でなんと三割を切っていて、当然のごとく断トツの最下位、五位のチームと既に十ゲーム以上の差がついているのだ。
 前の年も五月まで成績は悪かったが、その後は持ち直してどうにか三位に入っており、昨年の比ではない酷さだ。そもそも試合内容自体もかなり酷いもので、間に十三連敗なんてものを挟んでいる。
 優勝した年から黄金時代が始まるなんていうのは夢のごとく。確かに三年連続でAクラスには入っているものの三位で優勝争いには絡んでおらず、三位としての成績も年々下がってきている。

 ただの一ファンであり素人の巡から見ても、チーム力がガタガタと落ちており、昨年までの三位という地位も、優勝した年の貯金を切り崩してのものだというのが感じ取れた。
 何しろ優勝した年のキャッチャー、ファースト、セカンド、サード、センターが既に球団からいなくなっているのだ。内野手はほぼ全滅し、守備の要のセンターラインも崩れ、新たにその位置に収まっているのは育ってきた若手は少なく、他の球団からトレードなどで入団してきた選手や新外国人が主である。
 若手が思っていたほどに育たず、補強として入団した選手たちも事前に想定していたほどの結果を残せない。ならば低迷するのも致し方ないと言えなくもないが、あまりにも酷い、記録的な低空飛行はただそれだけが理由だとは思えなかった。

 優勝した年にエネルギーを使い果たしたのか、また仕事が忙しくなったこともあってか、優勝した年以降は巡の応援活動も控えめになっていた。試合結果は見るものの、実家を出て一人暮らしを始めた土地および勤務地の立地的な関係もあって、球場に足を運ぶことは殆どなくなっていた。
 それでも優勝した後も三位、Aクラスにはなっているのだから、まだ大丈夫だろうと勝手に思っていたが、考えてみれば優勝した年の翌年から一人、また一人と姿を消してゆく優勝戦士達。その去り方も円満なものは少なく、確執をもって去ったり、厄介払いをするように契約を切ったりトレードされたり、優勝した功労者に対するものとは思えないことが多かった。
 更に親会社が変更となっての今年が一年目、とにかく不穏な感じしかしなかった。

 奇しくもというべきか偶然というべきか、巡を取り巻く状況も変わっていた。
 下っ端時代は終わり、いつの間にかチームリーダー的な立場で仕事をしている。その仕事自体に充足を感じないわけではないが、まだ二十代半ばの世間的には青二才だという自覚はあり違和感は常に身にまつわりついている。自分の実力もあるとは思うが、在籍していた上司や先輩達が一人また一人と異動したり退職したりし、所属しているグループでも上から数えて何番目という年次というのもある。
 巡が新人だった時代、今の巡の年次の社員なんてまだ若手、下から数えた方が早いくらいの年次だった記憶がある。若返っていると言えば聞こえは良いが、任される身としては不安も覚える。

 自分も、このまま同じ場所に居続けてよいのだろうかと。
 このまま今の会社にいても先細りするだけで未来は明るくないのではないか。自分のことだけを考えれば今はチームリーダーで、さらに数年後にはもっと上の立場となっていることは想像できるのだが、それで問題はないのか。退職していった人たちは優秀な人が多かったような気がするし、この会社を見限って出て行ったのではないか。そんな思いが頭の中をぐるぐると回る。

 実際には何の関係もないのだが、今の自分の状況が、横浜のチーム状況と重なって見えてきてしまうのは、気持ちがそれだけ沈んでいるということだろう。
 こんなことじゃあいけないと思う巡のもとに、ある日一通のメールが届いた。メールの差出人と内容を見て、落ち込み気味だった気分がふと軽くなる。
 年下の友人、永江光葉からの連絡だった。

 

その6につづく

 

■バックナンバー
1.歴史と共に、今
2.なぜ、このチームを
3.大洋ホエールズのエース
4.歓喜の瞬間、そして

 

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