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【ベイスターズ小説】青き星たちの反撃 12.<過去>束の間の光

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 2002年、2003年、2004年の3年連続最下位から、2005年は牛島新監督のもとで3位に入った。
 Aクラス。優勝には遠く、また成績自体も負け越してはいたが、それでもやはり心地よいものである。
 いやがうえにも2006年への期待は高まる。

「ほら、やっぱり上がってきたじゃないですか。来年は期待できますよ」
 3位になったからというわけではないが、久しぶりに永江と会って飲んでいた。今までもメールなどでの連絡はたまにしていたが、面と向かって会うのは一年以上ぶりのことである。
「純国産打線でもこれだけ打てるなら十分じゃないですか。多村、村田、小池、佐伯、金城、石井……那須野、染田だって、来年はいけると思いますし、楽しみですよね」
「確かに、投手陣が良いと強いよな。今年はついに、三浦がタイトルをとったし」
 セリーグの投手陣の中では唯一の防御率2点台で最優秀防御率、それに奪三振のタイトルも門倉と分けあった。
 加藤、木塚、川村の中継ぎ陣に、抑えとして助っ人のクルーン。今年は期待に答えられなかったが、那須野と染田はまだルーキーであり、永江の言う通り来年以降に期待できるならば構わない。
「やっぱり、それだけの力はあるんですよ。ちょっと歯車が噛みあわなくて最下位とかなりましたけど、今年を境にまた上昇しますよ」
 ファンというのは現金なものである。
 それまで成績がどんなに悪かったとしても、希望の光が見えればたちまちのうちに意見を翻す。しかも今回の場合、実成績としてAクラスというのがあるので、根拠のない妄想というわけでもないのだから、期待しないという方が無理というもの。
 だけど巡にしてみれば、一度のAクラスでそこまで明るく前向きになるというのは難しい。昔から応援してきてAクラスに入るのなんて十数年に一度、98年に優勝する前のことを考えてみると、97年に2位となった年以前ではAクラスの記憶はただ一度だ。
 もちろん、巡が応援し始める前にAクラスに入ったことはあるのだろうが、巡の視点で考えればそういうことなのである。
 だから、ちょっと好成績を残したからといって二年連続も問題ないとはとても思えないのである。
「永江くんは前向きだよね」
「3位になったんですよ、むしろ、なんで前向きになれないんですか」
「いや、前向きになっていないわけじゃないよ。来年は楽しみだし」
 おそらくこれは、長年ファンとして応援してきたことによって作られた自衛のための思いなのだろう。どうしても、ネガティブな方向に考えてしまうのは。
「てゆうか、それより神門さん、転職したと思ったら今度はいつの間にか結婚なんかしていて! 奥さん紹介してくださいよ」
 勢い込んで唾を飛ばしてくる永江の言う通り、会社を変えてしばらくした後に結婚をしていた。
「まあ、そのうち機会があったらね」
「奥さんはベイスターズファンじゃないんですか? 球場に連れてきてくださいよ、一緒に応援しましょう」
「いや、彼女はどうだろう。そこまで野球ファンではないと思うし、親の転勤で名古屋に住んでいたから、どちらかといえば中日を応援しているはず。それに、野球の話とかも特にしないし」
 仕事も忙しいし、職場は東京だから仕事帰りにスタジアムに寄るというのも難しい。今年は3位だったがそれまでは低迷していたから、野球の話も殆どしたことはない。球場に足を運ぶことも今や殆どなくなって、テレビやネットで応援することが主になり、いきなり野球の話をし始めるのも不自然に思える。
「そんなこと気にせず、一緒に観戦に来ればいいじゃないですか。中日ファンってことなら野球は好きなんだろうし、ファンにしちゃえば良いんですよ」
 気さくに永江は言うが、そんな簡単なものではない。
「来年は優勝目指しますからね、そうだ、強いドラゴンズに勝って優勝しちゃえば奥さんだってベイスターズファンになるんじゃないですか? うん、これですよ、もう間違いなし、絶対ですって」
 強ければファンになるなんてものではないが、永江もアルコールが入って気分が高揚していたのだろう、声高に言い切る。気分よく寄っている永江に水を差す必要もなく、巡も笑いながら話をあわせる。
 でも実際この時、次の年からは明るい未来が待っていると信じられたのだ。楽しみな若手も入ってきたし、優勝を知るベテランだって減ったとはいえ石井も三浦も残っている。

 だけど後に知ることになる。
 2005年は暗黒期の中でほんの一瞬、光が差しただけにすぎなかったことを。

 真の暗黒がまだこの先に待っているなんて、予想しえようはずもなかった。

 

その13につづく

 

■バックナンバー
1.歴史と共に、今
2.なぜ、このチームを
3.大洋ホエールズのエース
4.歓喜の瞬間、そして
5.<過去>暗黒の始まり
6.<過去>悔しさの強さ
7.<CS1st>がっぷり四つ
8.<過去>消えゆく優勝戦士達
9.<過去>2003年、5月
10.<過去>底の底
11.<CS1st>巨人にだって負けていない

 

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