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【ベイスターズ小説】青き星たちの反撃 19.<CS1st>一進一退

更新日:

 

 阿部の2ランですぐ同点に追いつかれたが、再びチャンスが巡ってきて打席には関根。本来なら梶谷が立っていた筈の打席に関根がいる。無念さはあるが、今はただ、出場して戦っている選手を応援するだけである。

「打った!」

 打球の行方を見守る。

 ボールは外野まで飛んでいるが、三塁ランナーはピッチャーの石田である。タッチアップできるかどうか。

「ゴーッ!」

 打球がグラブに収まった瞬間、永江が叫ぶ。

「来い、来い、帰ってこーい!」

 ユノが両拳を握りしめて瞬きもせずに見つめる。

 全力で走る石田。

「……っしゃー!!」

 ファンの歓声が轟く。

 再び、勝ち越し。

 梶谷の代わりに急遽出ることとなった関根がきっちりと仕事を果たす。

 いける。絶対にいけると沸き立つファンたち。

「……え?」

 喜びつつグラウンドを見ると、巨人の先発投手、内海がベンチに帰っていくのが見えた。

「内海をKOしましたね!」

 嬉しそうに永江が話しかけてくるが、巡としては単純に喜んでばかりもいられなかった。

 今日の内海の出来ならば、続投してくれていた方が点を取れそうだった。短期決戦、早い決断は当然とはいえ、次に登板するのが誰かというのが問題だ。

 点差はまだ一点、この一点を九回まで守り切るというのは至難の業であり、もっと幾らでも点が欲しいところだ。

 果たして、次の投手は。

「……大竹かぁ」

 思わず唸ってしまう。

「大竹なら打てるんじゃないですか?」

「いや……」

 FAで巨人に来て、パッとした成績を残せていないことは確かであるが、横浜というチームは広島在籍時代から大竹を苦手にしている。厄介なのはシュートで、凡打の山を築くのを何度見てきたことか。チャンスがあるとすれば立ち上がりだろうが。

 しかし嫌な予感が当たったのか、あるいは大竹だって大事な試合で気合も入っていたためか、打線の勢いはぴたりと止められてしまった。

 序盤から点を取ってリードを大きく広げて余裕を持って逃げ切る、なんていうハッピープランはやはり難しいようだ。

 それでもリードしていることに変わりはない。追加点は取れなかったが、石田も相手に得点を許すことなく試合は進んでいく。

 このまま終わってくれれば良いと思いつつ、そんなことにはならないだろうという予感も抱く。

 巨人戦、かつてはゲーム終盤にいけばいくほど巨人の強さを感じさせられていた。リードしていてもリードをしているとは全く思えず、ワンチャンスをものにされて逆転されるのを何度見てきたことか。

 かつてほどの強さを感じられなくなっているとはいえ、それでも甘い相手ではないのだ。クローザーの山崎も、今年はルーキーだった昨年ほどのボールのキレもないし、安定感にも欠けている。出来れば2点、3点と差を付けて終盤に入りたいところだ。

 そんな巡の、ベイスターズファンの想いを嘲笑うかのように。

「……フライだろ? 取れる……」

 うまくすくいあげられた打球ではあるが、勢いがあるわけではなかった。

 それでも、ここ東京ドームでは。

「――――嘘でしょーーっ!?」

 ユノが頭を抱えて悲鳴をあげる。

 巡もまた同じような気持ちであった。

 FAで巨人へと出て行った村田。

 横浜スタジアムでの打ち方を良く知っているこの男には、何度も痛い目にあわされてきた。流し打ちでライトスタンドに放り込む技術は確かだ。そして、本拠地となった東京ドームでの打ち方もまた習得したのか。

 外野フライかと思ったその打球は、そのまま外野スタンドへと吸い込まれていった。

 同点ホームラン。

 湧き上がる一塁側、ライトスタンド。

 くるくる回るオレンジタオル。

「これくらい、想定の範囲内だから」

 口にする言葉は嘘ではない。

 だが、同点にされたというのは痛い。

 接戦で発揮される巨人の強さ。ここ数年はチーム力が落ちてきているとはいえ、ずっと上位を争ってきた選手には、ここぞという場面を見極め、結果を出す力がある。

「石田くん、交代だね」

 夕の言葉にグラウンドを見てみれば、石田がマウンドを降りるところだった。

 6回、この回を投げ切りたかったろうが、同点HRを被弾して無念の降板だろう。

 それでも。

「石田、よく頑張ったぞ!」

 スタンドからは拍手と共にそんな声が出ていた。

 下を向く必要はない。

 手の付けられなかった坂本をきっちり抑え、ゲームの主導権は渡さなかった。阿部、村田というベテランの二人に上手く打たれただけだ。

 二番手は。

「砂田くん、頑張れ!」

「頼むぞ、砂田」

 祈るように、投球練習をする砂田を見つめる。

 同じ左腕だが、石田とはまたタイプが異なる砂田。先発をやりたかったのだろうが、中継ぎとして貴重な役割を果たしてくれている。

 対するは、阿部。

 阿部に投げるなら同じ左腕でも石田より砂田、というのは分かる。

 まだ同点、負けたわけではない。

 ここからまた試合が始まる、そういう気持ちで巡はグラウンドに改めて意識を向けた。

 

■バックナンバー
1.歴史と共に、今
2.なぜ、このチームを
3.大洋ホエールズのエース
4.歓喜の瞬間、そして
5.<過去>暗黒の始まり
6.<過去>悔しさの強さ
7.<CS1st>がっぷり四つ
8.<過去>消えゆく優勝戦士達
9.<過去>2003年、5月
10.<過去>底の底
11.<CS1st>巨人にだって負けていない
12.<過去>束の間の光
13.<CS1st>見たことのない未来に向かって
14.<過去>光ささぬ闇
15.<過去>心の弱さ
16.<過去>横浜魂を抱いて
17.<CS1st>死闘の幕開け
18.<過去>変化の予兆

 

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