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【ベイスターズ小説】青き星たちの反撃 16.<過去>横浜魂を抱いて

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 横浜ベイスターズの最終戦も酷い幕切れだった。

 どうにか横浜という地を去るということは避けられたが、球団を買収したのはDeNA。モバゲーのイメージしかなく、良い印象は抱けない。

 球団売却前に行われたドラフト会議では、本来なら即戦力が欲しいはずなのに、ヤケクソになったかのように高校生ばかりを指名しており、来年も期待できないと失望させられる。

 監督に就任したのは何の冗談か巨人OBの中畑清。有名ではあるが、コーチ経験もなく、巨人の監督、コーチとしても声がかかっていないことから、監督能力に疑問を抱かざるをえない。

 焼け野原となったベイスターズの監督になったところで、ロクな結果とならないことは目に見えており、他の監督候補からは軒並み断られたのではなかろうか。経歴に傷を付けたくないというのは人として普通の感情だと思える。

 残った中、監督をやりたいと長年の希望を抱いていた中畑だけが拾い上げてくれたということか。

 監督として全うな指揮が出来るとは思えず、また巨人OBの監督ということでファンの多くは期待していなかった。

 話題性だけでは勝つことなんてできないと。

 

 相変わらずの多忙の中、巡は会社から帰宅後、風呂から出てPCの前に座った。

 仕事でも疲れ、横浜の話題でも明るい気分にはなれない。それでも少しでも気を紛らわせたく、何か見て楽しくなるような、あるいは元気が出るような記事や動画がないか探す。

 あるとしたらやはり1998年の優勝した年までさかのぼらねばならないのだろうか。他に思い当たるとしたら、ハーパーの逆転満塁サヨナラホームランか。そんなことを考えながらネットを泳いでいると。

 横浜スタジアム、選手たちがグラウンドに並んで立っている。最終戦のセレモニー、最後の挨拶は通常であれば監督であるはずだが、違っていた。そこに立っているのは、スーツを着たおじさんだった。

 おじさんがマイクに向かって口を開く。

 それは、熱い、熱いスピーチだった。

 

『ファンの皆さん、横浜魂を発揮しましょう! 選手と一緒になって戦いましょう。必ず強くしましょう。この地で胴上げをし、パレードをしたい! 横浜の本当の底力を全国に示そうではありませんか!!』

 

 そうだ。

 自分たちファンだって、文句を言い、愚痴を口にして、現実から目を背け、選手と一緒に戦っていなかったではないか。

 強くなりたい、強くしたいという気持ちを本気で持っていただろうか。

 横浜で胴上げ? パレード?

 横浜の底力?

 本気で言っているのか。

 

『明日からほんとに優勝を目指す、そういう力強い横浜ベイスターズ! 絶対に横浜の地を離れたくありません!』

 

 2010年、横浜を離れるかもしれないという話が流れた。

 それでも、球団が消滅するよりかはマシだという声も出ていた。

 だけどそうだ、ベイスターズは親会社名を外し、“横浜ベイスターズ”となったのだ。横浜の地だからこそベイスターズなのだ。

 横浜を離れたら、親会社が変わっただけにとどまらず、それはもはやベイスターズではない。

 

『必ずここにいる選手は、来年皆さまと一緒になって戦います! 本年1年間ありがとうございました! ありがとうございました! ありがとうございました!』

 

 ベイスターズを横浜に残すために、どれだけ駆けまわってくれたのだろう。

 そして本当に横浜に残り、選手達も一緒に戦ってくれた。

 加地社長。

 社長である前に、誰よりもベイスターズを愛し、ベイスターズのファンで応援し続けていた加地社長。

 社長なのに、毎試合のように横浜スタジアムを訪れ、ライトスタンドに陣取り、ファンと交流し、先頭を切って応援していた。

 そんな加地社長の心からの熱いスピーチを聞いて、巡の瞳が熱く潤む。

 加地社長はリップサービスで、ファンのために大きなことを言っているわけではない。本気でベイスターズの未来を信じ、強くしていこうと心から叫んでいる。

 これだけの熱い気持ちを、自分はここ数年持てていただろうか。

 続けて、2011年のドラフト指名選手のコメントに辿り着いた。

 

『球団の問題はよく分からない。村田選手ら強力クリーンアップと三浦選手ら大黒柱のいるところで野球ができることはうれしい。迷いなく行きたい』

 

 そう笑顔で迷いなく言い切ったのは、ドラフト1位の北方だった。

 毎年最下位で球団売却の話も出ている暗黒球団、存続するかどうかも怪しい状況の中では誰も入りたがらないのではないかと思っていただけに、嬉しそうに話している北方の姿は意外だと思えた。

 勿論、社交辞令は含まれているのかもしれない。

 それでも、嬉しかった。

 指名した他の高校生達も断ることなくベイスターズに入ってくれた。むしろ指名してくれたことに感謝の言葉を告げ、自分たちがベイスターズを引き上げるのだという思いを持ってくれている。

 プロに入る以上、他の人だって同じように考えるかもしれないが、あのような状況下で快く入団してくれた高校生達には自分たちの方こそ感謝しなければならない。

 球団は生まれ変わった。

 この先どうなるかはまだ分からないけれど、本気で強くなるために動いてくれているのではないか。

 信じさせてくれなかった球団、信じることが出来なかった自分。

 もう一度、自分も気持ちを新たに応援していけないだろうか。

 それは心の持ちよう一つで、いつでも始めることが出来るはずだった。だけど、まだ完全に立ち上がることが出来ない。

 期待はする。

 でも期待しすぎてはいけない。

 悲しいかな、染みついた自衛の考えはそうそう抜けない。

 それでも、2011年とは違った気持ちを抱き、2012年のDeNA初年度が始まった。

 

その17につづく

 

■バックナンバー
1.歴史と共に、今
2.なぜ、このチームを
3.大洋ホエールズのエース
4.歓喜の瞬間、そして
5.<過去>暗黒の始まり
6.<過去>悔しさの強さ
7.<CS1st>がっぷり四つ
8.<過去>消えゆく優勝戦士達
9.<過去>2003年、5月
10.<過去>底の底
11.<CS1st>巨人にだって負けていない
12.<過去>束の間の光
13.<CS1st>見たことのない未来に向かって
14.<過去>光ささぬ闇
15.<過去>心の弱さ

 

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